あしなが鳩

こんにちはウルカ。 あしなが鳩を連れている。 シャルル・ド・ゴール空港は相変わらずの混雑で、行き交う人々は外気の冷たさからか、頬をあからめている。 連れているあしなが鳩は、私に寄り添うように歩いている。 もうすぐ、離ればなれにならなければなら…

たった今飛んだ女学生は冗談か

こんばんはウルカ。 初めて訪れる都市の駅は、新品の自動車のような匂いがした。ホームにあるベンチには、膝をかかえるように男が座っている。キリキリとした寒さを、荒涼とした自己の時間軸を、何とか忘れようと、何とかやり過ごそうとしているのだろうか。…

移動中

こんにちはウルカ。 移動日、というものがある。 文字通り、移動に邁進する日の事であり、出張が多い職種の人間には耳馴染みのある言葉だろう。 遠方や、集合指定された時刻が夜中や早朝である場合、前日に移動を済ませておく必要がある。 業界ではこの行動…

リ サ イ ク ル

こんばんはウルカ。 限りなく白に近いシアン色の細氷を含んだ風がふいている。 500デニールのナイロン・シェルのフードを目深に被って、凍結した道路を滑るように進む。 否、実際に滑っている。 ローラ・スケート・シューズを履いているからね。 滑倒を恐れ…

深いネイビーの暗くなる前

こんにちはウルカ。 深いネイビーの一軒家があって、目の前にバス停がある。 深いネイビーの一軒家には、クロアチア人の男性同士のカップルとその子供役として中国から連れてこられた6才の男の子が暮らしている。 とても幸せそうで、男の子もクロアチア人の…

だらしない施術

こんばんはウルカ。 雨上がりの街は靄で白くふやけていて、銭湯の脱衣所のようだ。 のぼせたビルの窓から洩れる灯は、普段よりも少しだけ赤い。 僕は速足で歩いている。 走ったり、自転車に乗れば、もっと速く移動することができる。 自動車や、飛行機に乗れ…

イグアナのプッチンプリン

こんにちはウルカ。 オオトカゲも良いけど、ゾウガメのことも書いてよ。 といったようなメッセージをいただいたので、今日はグリーンイグアナのプッチンプリンの事を書いてみよう。 グリーンイグアナのプッチンプリンは、数年前よりうちに居候している。 う…

ゲロうま

こんにちはウルカ。 海外のフォトグラファーのブログに書かれていた。 「普段は滅多に写真を撮らない。しかし撮るときはフィルム100ロール近く撮る。そしてその期間は1年のうちわずか1ヶ月程度」 わたしも充電期間が必要かもしれない。 みたいなことが書いて…

大蜥蜴とマリーゴールドの花

こんにちはウルカ。 オオトカゲの食性は、大多数が肉食である。 中には草食性のイグアナや、フィリピンの秘島で発見された体長が2メートルを超えるのに体重は10キロにも満たないフルーツを主食とするオオトカゲもあるが、コガネオオトカゲであるウルカは…

群衆の先頭に颯爽と

こんにちはウルカ。 折りたたみ式のソファーを、脇に抱えて颯爽と歩いている。 茶色の長髪を靡かせて、重量30キログラムのソファーを軽々と、涼しい顔で。 すれ違う人々の羨望の眼差しが、心地の良い電気刺激のように私につきささる。 私はこれから、脇に…

天鼠の木

こんにちはウルカ。 紅葉の季節だね! 木の葉は、死が近づくと紅くなる。 それから完全に戦力外となると、見放され、枝から切り離される。 枝から切り離された木の葉は地面に落ち、微生物や虫や動物や雨や風や光にバラバラにされ、自分を切り離した木を支え…

飼育記

こんばんはウルカ。 お前、生卵が好きだったんだな.... その口のかたちで、皿にといた生卵を啜って呑むことができるとは、俺はびっくらこいたよ。 トカゲの口にも啜るという機能がついているんだな。 もしかして本気出したらざる蕎麦とかも啜れるのか? まあ…

クラマ

こんばんはウルカ。 クラマは、古くから人間の移動手段として、住居として、家畜として、ペットとして、友人として、奴隷として、ビジネスパートナーとして、寄り添うように共存してきた。 クラマは、種により様々であるが50年から80年ほど生きる。 中に…

もう、十字架

こんばんはウルカ。 先ず、とても社会的かつ野生的な色の封筒、そう、薄いブルー・アンド・グリーンの封筒がデスクにそっと置かれる。 クリスマスの朝の目覚めのようなトキメキを感じながら、俺は封筒を開けると日取りをチェック・イット・アウトする。 なる…

想像という実体の断片化の

こんにちはウルカ。 昨日はLEGOの事を書いたけど、そろばんや囲碁もデジタル機器に入るらしいな。 デジタル機器には必ず電源があるというわけではないようだね。 デジタルの利点、特徴として、劣化しない、複製が容易、軽いデータ量、というのがあるが、そう…

サイズ

おはようウルカ。 LEGOというものがある。 カラフルなブロックを組み合わせて、動物やお家やロケットをつくって遊ぶことができる。 あのブロックのひとつひとつを目に見えないほど小さくして、色数を65,536色くらいに増やす。 その細かなLEGOで正確に作った…

ボルネオオランウータンの幽か

おはようウルカ。 随分前に、といっても数ヶ月程度だと思うけど、このブログにパタパタ時計を買った話を書いた。 遡って調べるのが面倒だけど、遡ろう。 これから書く事に関わるからな。 おう、おう、遡ってきましたよ。 パタパタ時計を買ったのは今年の5月…

死と毛布の間に

こんばんはウルカ。 自分がメインの会議中とか、重要っぽい時に、ふと浮かんでしまって、どうしても頭から離れないことがあることって、あるよな。 頭で生卵を割る、手が滑って卵が床に落ちる 卵で床が汚れちゃった 生卵で頭を割る、卵が滑って床が卵に落ち…

面として僕に対に対面と面として面の僕に

こんばんはウルカ。 クモハ289ー303に乗っている。 バッグから丸めたナイロン製の上着を取り出して羽織る。 雲が、大陸のように空にある。 雲色の大陸を太陽が半ば透過するように照らしている。 太陽は、雲よりも随分と小さいものだと思っていたけれど…

奈津江

こんばんはウルカ。 タクシーが、雨粒で不透明になったフロントウィンドウをワイパーで拭っている。 扇状に雨粒を拭われたフロントウィンドウは、車内の湿度でやっぱり不透明のままで、 タクシーは半ば投げやりにウィンカーを灯したり消したりしている。 後…

グランディーバ・マッシヴ

こんばんはウルカ。 駅前に、行きつけの寿司屋がある。 昔ながらの江戸前寿司を謳っているが、大将は南国出身だったりする。 カウンターと、奥に4人がけの席が五つくらいの店。 俺はこの店のカウンターで、本やら動画を持ち込んでは昼間からだらだらと過ご…

口から、出しなさいよ

こんにちはウルカ。 おい、ウルカ、それは食料ではない。 旨そうにみえるかもしれんが、違うんだ。 俺のペットなのだよ。 ほら、人間でも食用家畜をペットとして可愛がっている奴がいるだろ? あれと同じ感じで接してくれる? おい、だから喰うなって。 口か…

世界をすくう

こんにちはウルカ。 随分と人口が増えたね。 陸や海も汚れてきたし、石油も減る一方だよ。 高層な建物を乱立したり、道や列車のダイヤを増やすよりも、地球をコピー・アンド・ペーストで3つに増やそうよ。 3つの地球は団子みたいに並んで太陽の周りを公転…

線路と線路の間の草叢

こんにちはウルカ。 大きな街の駅が近づくと、何台もの列車が行き交うことができるように、線路の数が増える。 線路と線路の間に、小さな公園ほどの広さの草叢があるのがみえる。 その草叢には人の背丈ほどの草が鬱蒼と茂っており、なぜ手入れをされないのか…

正解電飾

こんばんはウルカ。 無数にLED電飾を括り付けられた街路樹が、オフィス街に並んでいる。 夜になると冗談のように一斉にLED電飾が点灯して、辱めをうける街路樹たちは、何を想うのだろう。 私はそんな街路樹たちの下を申し訳ない気持ちで歩いている。 …

タケ9%

こんばんはウルカ。 層師という者がある。 層師は物事を重ね合わせて一つの物事をつくる職人である。 先ず、ベースとなる層を決め、それから重ねる層とその透明度を決める。 たとえば杉浦さんをベースにして、山本さんを透明度30%、ペルシャ猫を透明度1…

濫觴

こんばんはウルカ。 カタカタと窓ガラスが鳴っている。 こんな寂れた街の、今にも崩れ落ちそうなビルとビルの間にも、風が吹き抜ける。 気持ちよく吹き抜けることができる場所は他にいくらでもあるだろうに。 ものずきな風もあるものだな。 オレは掠れた革張…

父親は10年間にひとりまで

こんばんはウルカ。 ロレックスという腕時計をつくっているメーカーがある。 正規店で購入するには身分証明と登録が必要で、1度購入すると、同じ商品は5年間購入することができない。 さらに、同メーカーの他の商品についても1年間購入することができないそ…

ラーダ・ニーヴァ

こんばんはウルカ。 ロシア製のラーダ・ニーヴァというクルマがある。 俺は今日初めて実物をみたのだけど、形、サイズ感ともに凄く良いね。 本国ではプーチン氏も愛用しているとかいないとか。 信号待ちで隣になったラーダ・ニーヴァは白色で、左ハンドルの…

軌条の上

こんばんはウルカ。 軌条の上を歩いている。 地面と平行に両手をぴんとはって、平衡に平衡に。 軌条の高さは15センチメートルほど。 足を踏み外したとしても、約15センチメートル落下するだけである。 少し心拍が速まる程度のことだろう。 これでは刺激…