しるべ君

こんばんはウルカ。 スマートフォンに顔をかざすと、俺というアイデンティティを認識して、セキュリティが解除される。 水色のアイコンをタップしてアプリ、しるべ君を起動する。 眉毛が矢印のかたちをしたキャラクター、しるべ君が挨拶をしてくれる。 「こ…

通称E・E・P

こんにちはウルカ。 プロスポーツ選手とかってさあ、なんであんなに金もらってんの? 運動して試合に勝ったり負けたりして、子供が遊んでんのと一緒じゃん。 それ見て喜ぶ奴らがいるから商売になるんだろうけどさあ、病気を治すわけでもないし、食べ物生産し…

みんなで指をさして奇声をあげる

こんばんはウルカ。 幼稚園に通っている。 お家の前で幼稚園バスに乗る。 ママにバイバイと手をふる。 午前中は踊りをおどって大きな柔らかい積み木で遊んでご飯を食べると昼寝をする。 目がさめると黄色い帽子をかぶって幼稚園の周りをせんせいと探検する。…

しゃがみ頬づえサラリーマン

こんにちはウルカ。 俺の通う会社の近所に、非常に小さなカウンター席だけのカレー屋がある。 席と席の間は相当狭く、気を抜くと隣に座る者に触れてしまう。 座席は固定式で、自分の好きなポジションで座る事もままならない。 更に、そのカレー屋がお待たせ…

マイルドな全否定にはシャープな握手を

こんにちはウルカ。 ベスパに乗った青年が、荷台に海を乗せて信号待ちをしている。 「鮮海」と勘亭流フォントで書かれた荷台の海では、ザトウクジラがジャンプをして、海面に盛大な飛沫をあげる。 隣に並んで信号待ちをしていた軽トラックでシベリア大陸を運…

屋上の鳥獣店

こんばんはウルカ。 デパートの屋上に寂れた遊園場があって、その隅にひっそりと鳥獣店がある。 私は妻と子を遊園場に放つと、以前から気になっていたその鳥獣店へ一人で向かった。 私は鳥獣が好きだ。 鳥獣たちと気儘に人生を過ごしたい。 自然豊かな土地に…

リルサとサロサ

こんにちはウルカ。 臓物を透かせたレントゲン写真のような夜の空だよ。 あのビルやあのビルの灯りがもっと強ければ、臓物のかたちがはっきりと見えるのに。 箱型の段ボールから頭を出したリルサは、隣の明後日の方向を向いているサロサに説明した。 サロサ…

保湿ダンディ (Oh yeah yeah yeah)

こんにちはウルカ。 わたしは保湿の鬼なの 乾燥だけはマジかんべん 保湿ローション、保湿クリーム、保湿入浴剤、保湿ソープ、保湿ミラー、保湿マンション、保湿スマホ、保湿彼氏、保湿両親、保湿煎餅、保湿祖父、保湿ラサアプソ、保湿自転車、保湿ブランドバ…

凍えそうにしているつまさき

こんばんはウルカ。 部屋の隅に座っている。 白い部屋で、僕の周りには文字ばかりが敷き詰められている。 文字は当たり前のように真っ黒。 白い部屋にあいた意味を持つ穴。 こんなことなら、ソックスを履いて来るべきだったな。 僕は「凍えそうにしているつ…

子供に戻れる製薬の開発を待っているところです

おはようウルカ。 今日は祝日だというのに新しいクライアントと打ち合わせがある。 キレイなシャツときれいなパンツ、綺麗なクツをはいて、ちょっと良い腕時計をつける。 それから、クソボロボロのバブアーを着たら、けっきょく浮浪者のようなルックスとなっ…

袋ゴミ

こんばんはウルカ。 分厚い雲にディフューズされた太陽の光が、限りなく均等に街を照らしている。 俺はアスファルトで舗装された道を歩いている。 緑茶のかわりにYEBISUを少しのんだ。 公園の角に集められたゴミ袋に、カラスがたかっている。 黒い鋭い嘴は伸…

田中と工藤

こんばんはウルカ。 ラグビーでビールを飲んでいたらこんな時間になってしまったよ。 明日が始まってしまう前に、田中と工藤の話をしておこう。 影色の鳥が、声を上げながら飛び過ぎてゆく。 ベランダ平線から、太陽が顔を出して僕の目玉に盛大なハレーショ…

ほら、20年もすれば

こんばんはウルカ。 ほら、此処に大きな建物がたつよ。 あの頑丈そうな沢山の鉄の柱は、骨だよ。 とても高い技術や計算で、あの鉄の柱は組み合わされているんだ。 あの頑丈そうな鉄の柱は、一本一本が正確で正解なんだよ。 おしまいにはきっと、綺麗な白い壁…

アルダ

こんにちはウルカ。 先日うちへやってきたアルダブラゾウガメのアルダ(本当は胸焼けするくらい和風な名だけど、ここではアルダの方がウルカとあいが良いからな、あいが。)のことを書いてみよう。 ウルカ、お前は今週殆ど食事をとっていないね。 先週のあの…

ノーマル・テンパチャリスト

こんにちはウルカ。 こんばんはかな、 肌寒くなってきたね。 クルマのエアー・コンディショナーについても、冷風より暖風を選択する事がふえたよ。 温度とは面白いものだよな。 一部を除いて生命が快適に暮らす温度は摂氏10°〜30°くらいだろう。 所謂常…

潤 潤(ルゥェン ルゥェン)

こんにちはウルカ。 なあ、平山ちゃん、最近、何か欲しいものとか、やりたい事とか、ある? ああ? あるよそりゃあ、手っ取り早く金だろ、休みだろ、旅行へ行きたいし、うーん、いまなら、南米かアイスランドかなぁ、でも結局東南アジアが落ち着くんだよな、…

欲欲(ユィーユィー)

こんにちはウルカ。 余裕が無い方、予備余裕の携帯をおすすめします! 時間に... 心に... お金に... 置き場に... 体力に... ギガに... 携帯に便利な専用ポーチ付き⭐︎ お支払いは欲望で! 電子欲望にてお支払いいただいた場合、2%ポイント還元いたします! …

大人用おじいさんウサギ

こんにちはウルカ。 女店員がカラーボールを投げる。 大人用ポッピングで逃げる犯人は、高々と跳び上がって、女店員の投げたカラーボールを簡単にかわす。 犯人は空中でくるりと1回転すると、ドシャリドシャリと大人用ポッピングを弾ませて、あっという間に…

50%グレイ人間

こんにちはウルカ。 明るい部屋でマチコを歌うよ。 マチコはとっても暗い歌だけど、明るい部屋で歌えばフラットになるよ。 50%グレイ色の明るさだね。 そう考えると、透明に最も近いのは乳白色ではなくて、50%グレイ色なんだね。 そうだよ、光の三原色…

ザァザァと記憶の枝を揺らしている

こんばんはウルカ。 山道を、オートバイで走っている。 オートバイの排気音と風を切る騒々しい音が、辺りの静けさをよけいに深くしている。 すっかりと、夜が広がっている。 旧式のヘッドライトは目の前ばかりを照らして、辺りの闇をよけいに深くしている。 …

黒い光の糸

こんばんはウルカ。 自分のことを小生って言うやつと、オイラって言うやつ、どっちが苦手? うーん、小生かなぁ。 てか、小生ってなに? なんか、へりくだった言い方らしいよ。 へぇ〜、僕なんて、ちっせぇ生き物ですって感じ? でもさぁ、どことなく偉そう…

生きることとは常に永遠につながるドアを探すようなものだ

こんにちはウルカ。 やった事がないことを出来ない事と判断する奴は多いね、たしかに。 まったく、最近の若い奴らときたら… ムロさんはそう言うと、非・電子タバコに火をつけた。 ムロさんは、クラゲ結び職人である。 大海に浮かぶ夥しい数のクラゲとクラゲ…

まさに水面にピロシキ

こんにちはウルカ。 ゲリラ豪雨 ゲリラ豆腐 ゲリラ同封 ゲリラ交付 ゲリラ娼父 ゲリラ毛布 ゲリラ坊主 ゲリラむふふ ゲリラポンプ ゲリラ暴君 ゲリラ浩くん ゲリラ昆布 ゲリラ上手 ゲリラジョーズ ゲリラジョーンズ ゲリラ雑炊 ゲリラ脳髄 ゲリラ頬ずり ゲリ…

沖本さん

おはようウルカ。 やれたスーツにボロボロのセイコーを左手にまいた40代が、満員電車で歯を食いしばっている。 今月の営業成績順位は、下から数えた方が早かった。 若い奴のような体力も話題も、ない。 ペコペコしたシタテな態度は、取引先にナメられるだ…

傳力

こんにちはウルカ。 床が腐葉土で座席は苔の生えた岩や樹木の根、吊革や荷棚は絡み合う枝や蔓。 手洗いは3号車にある滝。 ネイチャー・トレインには、猿や鳥やカモシカなどの動物も同乗する。 ゴロゴロと転がる丸太の車輪は、意外に安定していて、振動が心…

くそはええ

こんにちはウルカ。 ゾウガメの子を近所の公園で散歩させている。 意外に素早い。 ハーネスリードが欲しいね。 ウルカを甲羅に乗せるにはまだまだ小さい。 完全に成体となるには後七十年くらいかかりそうだね。 その前に、ウルカも俺も死ぬな。 いつか、この…

カラフルで最新

こんにちはウルカ。 田舎の町へ向かう赤い列車に乗っている。 車窓から秋の陽が差し込むと、ゆるい冷房が効いた車内とバランスが良い。 乗客は疎らで、ひと席空けた隣に老人が座っている。 「随分涼しくなったよ」 独り言のような老人の言葉に、俺はこたえた…

幸せパーク

こんにちはウルカ。 近所にテーマ・パークがオープンした。 入場料は1800円。 入場すると先ず、茶碗を渡され、お袋役のおばちゃんに山盛りご飯をよそわれる。 それから絶叫・マシンに誘導され、ご飯をこぼさないように急降下に絶叫する。 絶叫・マシンを…

おに

こんにちはウルカ。 力強いゴシック体で、毒と書かれたプレートをつけたトラックが、毒を運んでいる。 運転手は青鬼で、金棒を助手席に立てかけている。 本業はラッパーなのだろう。 Bボーイ・ファッションに身を包み、カーステレオから流れるビートにあわ…

おかえり、はじめまして、お前

おはようウルカ。 ゾウゾウと吹く風が、辺りの空気を一掃して、何処かで使い古された空気を恰も新品かのように運んでくる。 俺は、此処では新鮮という事になった空気を吸い込むと、公園でゆれている木をみる。 生まれたての赤ん坊の新品感は眩しいけれど、も…