ラッシュアワーライスシャワー
おはようウルカ。
どんぶりに、山盛りの白米を左手に持ち、右手には箸代わりの焼いたシシャモを2本。
栗きんとん栗きんとんと連呼しながら満員電車へ飛び乗れ。
ただ連呼するだけではダメだ。
抑揚をつけて、あえて栗の主張をおさえめにしたイントネーションが上級者ってもんだ。
ホカホカご飯から立ちのぼる湯気で、密着してくるサラリーマンの眼鏡をくもらせろ。
眼鏡が真っ白にくもるやいなや、自らの鼻にシシャモを頭からつっこめ。
2本ともだ。
眼鏡が曇ってシシャモが鼻にブッ刺さった変顔を見れないサラリーマンに、ざまあみろと尻をたたいてみせてやれ。
まあ、それも見えないんだけどな。
視界を失ったサラリーマンの耳元で、ライスシャワーをテーマに即興で歌え。
時に優しく、時に激しく、切なさと心強さと。
ここまできたら、鼻に突っ込んだシシャモを引き抜いて、サラリーマンにそっと握らせてやれ。
右手と左手に1本づつだ。
妥協するな。
これは漢と漢のぶつかり合いだ。
ヨーソロー!ヨーソロー!
満員電車。
どこかで、栗きんとん、栗きんとんと連呼する声が聞こえる。
やたらと栗が控えめなイントネーションだ。
ただ連呼しているわけではなく、いやに抑揚がある。
徐々に近づいてきているな。
カーブに差し掛かったのか、電車がガクンと揺れた。
次の瞬間、突然視界を奪われた。
真っ白だ。
どんぶりに山盛りの白米が見えた気がしだが、まさか見間違いだろう。
近くでパンパンと尻を叩くような音がしているなと思うやいなや、耳元でライスシャワーをテーマにした歌を時に優しく、時に激しく、切なくも心強く歌いあげられた後、ほんのりと温かい棒状の何かを両手に1本づつ握らされた。
なあウルカ、世界中で起こる凶悪犯罪やテロ事件が、こんな内容だったら平和と呼べるのかな。
今日のウルカは休食。