そろそろクローンをまとめ買いする

f:id:maxm:20190428084632j:image

こんにちはウルカ。

 

鉄製の扉を、ひきずるように開ける。

湿気を含んだ粉末のような空気が重く蟠っている。

呼吸をする度に肺に塵が蓄積されるイメージを、頭を左右にふって追い払う。

 

背の高い建物だが二階があるわけではい。

窓は天井に2つあるだけで、早朝の低い位置から差し込むような光では充分な明るさを確保できない。

 

薄暗い室内の真ん中には大きな蒸し窯があり、静かに熱気を発しながら鎮座する姿は、粛々と悟りを待つ修行僧のようだ。

 

ゴムの長靴を履いている。

輪切りにされた木材を、12時間ぶりに蒸し窯から取り出す。

充分に水気を含んだエゾマツの木は、ずっしりと重量があり、しなやかで、表面は子供の肌のように肌理が細かい。

独特の香りは気持ちを落ち着かせる不思議な効果があるようだ。

もしかすると僅かに毒性があって、麻薬のように精神に作用しているのかもしれない。

 

ロータリーカッターを使い、大根の桂剥きのようにカットする。

均等な厚みとなったエゾマツを、更に無数の棒状に切り分ける。

フシや汚れ、欠けがあるような不良を選別する。

選ばれた良品の真ん中に切れ目をいれる。

最後に天削と呼ばれる無愛想な装飾を施し、適度に乾燥させる。

純白の紙で丁寧に包装すれば、また一つ名刀を世に生み出したかのような満足感が全身をつつみこむ。

今日の酒もうまくなりそうだ。

 

 

ウルカ、割り箸って良いよな。

毎回新品を使うというコンセプト、素材を活かした質感と無駄を排した機能美、個体差を極限まで抑えたクローンのような再現性で、いつでも同じ使用感を実現している。

加えて、国内であればどの地方においても強烈にスタンダード化しており、容易に入手できるという安心感。

 

使い捨てる一本一本に愛着はないけど、割り箸という存在には愛着がある。

これまた新しい愛のかたちかな。

 

 

今日のウルカはデュビアを8匹。