聖なる手
おはようウルカ。
じわりじわりと夜が明ける。
窓の前に立つ。
先程から何者かの視線を感じているが、窓の外はまだ薄暗いため、視線の主の姿を確認する事は出来ない。
この部屋は壁一面が窓になっている構造で、カーテンやブラインドなどの目隠しは一切ない。
窓に手をあてる。
分厚いガラスから、夜と朝の狭間の冷たい外気がぼんやりと伝わってくる。
ゆっくりと、腰をくねらせる。
徐々に動きを大きくする。
ガラスに身体を押しつける。
全身を使って情熱をダンスにこめる。
吐息でガラスに白くモザイクがかかる。
畝るようなリズムにあわせて性器を露出させる。
刹那、視線の主と目が合ったような気がした。
ウルカ、お前は雄かもしれないな。
オオトカゲの雄にはヘミペニスという二股にわかれた形の生殖器がある。
普段は体内に隠れているが、稀に下腹部から露出させることがある。
今朝、それを見たような気がしたよ。
タコ踊りが激しすぎて定かではなかったけど。
お前のヘミペニスは、ヒンドゥー教の神器として高値で取引される、聖なる手という神さまグッズに形がそっくりらしいな。
本物は希少植物から作られるが、なかなか手に入らない。
その為、密猟したコガネオオトカゲからペニスを引っこ抜いて乾燥させた偽物が大量に出回っているそうだよ。
どうだウルカ、ゾッとした?
おいおい、俺はお前のペニスを引っこ抜いたりしないから安心しろよ。
ヘミペニス、もう一回みせてくれる?
今日のウルカはデュビアを4匹、ササミと砂肝をがっつり。