よう、あったけぇな

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こんにちはウルカ。

 

うつ伏せで目を閉じている。

自動車のエンジンとタイヤが地面をなぞる音をきいている。

すぐそこで停車した。

ギイィ、ガチャ、バタン。

サイドブレーキを引き、ドアを開けて閉めるまで4秒弱。

ザッ、ザッ、

足音がこちらに向かっている。

堪らなく好きな音だ。

少しだけ頭をあげる。

あの人の優しい匂いをさがす。

 

目も、鼻も、耳も、その能力を失いかけている。

身体のいつくかの場所に腫瘍があり、気管に炎症を起こしている。

呼吸が難しい。

 

ドアが勢いよく開く。

ぼんやりと、あの人の明るい顔が見える。

ぼんやりと、名前を呼んでいる声が聞こえる。

ぼんやりと、大好きなあの人の匂いを感じる。

 

力を振り絞って、身体を起こす。

力強い手で優しく背中を撫でてくれる。

目を閉じる。

 

もう13年か。

そんなになるか。

あっという間。

いやそうでもないか。

一緒にいてくれてありがとう。

信頼してくれありがとう。

撫でてくれてありがとう。

また一緒に散歩しよう。

別れの日がきても悲しまないで。

幸せがたくさんあったから、よかったじゃん。

 

 

クルマを駐車する。

勢いよくサイドブレーキをひく。

あいつの好きなチーズを買ってきたぞ。

小屋のドアを勢いよくあける。

真っ黒なあいつがヨタヨタと起きあがる。

よう、調子はどうだい。

 

もう13年か。

そんなになるか。

あっという間。

いやそうでもないか。

何をフラフラしてやがる。

まだまだ、これからだぜ。

少しだけ乱暴に、あいつの背中を撫でた。

あったけぇな。

ありがとうな。

 

 

今日のウルカはデュビアを7匹