フリーズするとバドミントンに陥りやすい
こんばんはウルカ。
遮光カーテンの端から金色がもれはじめる。
俺はブラックアウトしたモニターを見ている。
非光沢の画面に、ぼんやりと俺のシルエットがうつっている。
マシンは前ぶれもなく、絶望的にフリーズした。
再起動かよ。
セーブした覚えは無い。
気分が乗ってくるといつもセーブを忘れる。
自動バックアップはマシンのパフォーマンスをギリギリまで高めるため、オフだ。
ノリに乗っていた俺の2時間半は、遮光カーテンで覆われたビルの一室で儚くも消えた。
あれ、入稿まであと2時間しかないじゃないか。
こいつはヤベェぜ、暖気にブログを書いている場合ではない。
いや、ここは一旦気持ちを落ち着かせるためにも、全く無意味と思われる行動をしてみるのもアリかもしれない。
よし、隣に座っている同僚を誘って屋上でバドミントンをしようか。
いや、それでは万が一バドミントンの羽根を屋上から落としてしまったら下を歩いている人たちが危険だ。
いやいや、どうだろう?バドミントンの羽根はいくら高いところから落ちたとしても、大した殺傷能力はないのではないか?
これは気になるな、誰か実験している奴がいるかもしれない。
グーグルだなグーグル。
いやいや、殺傷能力がないからといって、屋上からバドミントンの羽根を落とすのはマナー違反だろう。
まてよ、そもそもこんなに陽が傾いていては、眩しくてバドミントンどころではない。
だいたい会社にバドミントンのラケットも羽根もないじゃないか。
落ち着け、俺。
隣では同僚がヘッドフォンで何かを聴きながらノリノリでモニターに向かっている。
ムカつく奴だ。
今すぐそのジャックをさしかえて、メルツバウを爆音で流してやろうか。
いや、ここはモンゴルホーミー大全集を爆音の方が攻撃力は上かもな。
牛だって集まってくるかもしれない。
俺はしぶしぶと時が止まったままのデータを開く。
あれ、おいおいオイ、セーブされているじゃないか!
俺の無意識のセーブは、時空を超えて現在の俺に微笑みかける。
ありがとう、あの時の無意識な俺よ。
お前がいたから今の俺がある。
隣の同僚よ、ムカついてごめんなさい。
きっとあのカーテンからこぼれる金色のように、素敵な曲を聴いているんだね。
こんどフリスビーでも一緒にやろうぜ。
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