五平餅みたいな日
おはようウルカ。
窓を開ける。
カーテンが膨らみ、呼吸をはじめる。
さりげない風と、薄いカーテンに漉された日差しは、澱んだ部屋を洗ってくれる。
ウルカ、良い季節になったよ。
お前の国では四季を感じられないかもしれないし、お前には不要なものかもしれないが、俺はこの国の折々な四季が好きでね。
熱帯に暮らす生物にとって冬は死に直結する。
これからはじまるのは、生命維持装置なしで外へ出られるお前の季節だ。
さあ、一緒に日光浴をしようぜ。
チロチロとヤコブソン器官を使って俺を確認すると、一気に腕に駆け上がる。
爪が痛えよ。
おい、首を舐めるな擽ってえな。
窓辺に座ると、お前は俺の腕に腹を密着させる。
少しでも太陽の光を集めようと腹を広げている。
お前の腹、五平餅みたいだな。
首を撫でると瞼を閉じる。
嫌なのか心地よいのかはわからんが、心地がよいから瞼を閉じたことにしておこう。
後ろでラジオが今日は暑くなると言っている。
ベランダの向こうの通りではカブが小気味良い音で過ぎる。
炭酸水を飲む。
良い日だな、ウルカ。
蝉が鳴く頃になったら、アイスでもかじりながら近所を散歩しようぜ。
今日のニュース
【ペルーからNYへ】約束を果たすため、自作した木製フォルクスワーゲンで娘に会いに行く
ウルカはデュビアを8匹
今週のお題「家で飲む」