僕の指の腹は不明瞭でどうしても

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こんにちはウルカ。

 

ギィギィと扇風機が船が軋むような音を立てて首を左右に振っている。

しょぼくれた畳を足の指の腹で擦っていると、どこかで間の抜けた廃品回収を告げるアナウンスがループを始めた。

窓のすぐ向こうを電車が通り過ぎる。

古い木造のアパートはギクシャクと揺れ、水道水で沸かした麦茶がくすんだコップの中で小さな波をつくった。

 

アイドルの追っかけをやっている。

収入の殆どをイベントやグッズに費やしている。

必要最低限の部屋と持ち物。

ファッションなどに興味はないが、握手会やファンイベントでアイドルに不快な思いをさせたくないので清潔感だけには気を使っている。

 

ソーセージを作る工場でバイトをしている。

週替わりで夜勤があり、3年間の無遅刻無欠勤を評価され、ラインの一角を担うリーダーに任命された。

バイト仲間とはほとんど交流がない。

話をしてもつまらない、馬鹿な奴ばかりだ。

世間に対する体裁を気にしたり、女や酒に無駄な金を使って喜んでいる。

自分にとって本当に必要なものは何か、大切なものは何か、生きる目的は何か。

10年、20年後のために苦しんで貯金するくらいなら今の楽しみのために使った方が良い。

お金なんて死んでしまったらいくら持っていたって意味がないじゃないか。

将来のために今を犠牲にするなんて馬鹿げている。

 

今週末には推しているグループのライブ&握手会がある。

僕はこの時のために生きている。

あの空間にいると全身が痺れて鼻の奥が熱くなって今にも泣き出してしまいそうなほど意識が研ぎ澄まされて全霊で声をあげる僕は空中を閃く光となって世界中で湧き上がる真理の淵に触れることができる。

生きる目的がはっきりとあって、それに向かって仕事や日々の生活を健全に計画的に送っている。

 

ただどうしても思い出せないんだ。

大好きなアイドルの顔を。

写真や動画で確認してもどうもピンとこない。

僕の知っているアイドルの顔はそんなんじゃない。

知っているはずなのに。

握手してくれた時の笑顔も。

ステージでキラキラと輝いている瞳も。

全然思い出せないんだ。

僕の知っているアイドルの顔はそんなんじゃない。

知っているはずなのに。

話をしてもつまらない、馬鹿な奴ばかりだ。

僕は空中を閃く光となってソーセージを作る工場でバイトをしている。

真理の淵に触れることができる。

清潔感だけには気を使っている。

しょぼくれた畳を足の指の腹で擦っていると、どこかで間の抜けた廃品回収を告げるアナウンスがループを始めた。

馬鹿な奴ばかりだ。

世間に対する体裁を気にしたり、女や酒に無駄な金を使って喜んでいる。

必要最低限の部屋と持ち物。

ギィギィと扇風機が船が軋むような音を立てて首を左右に振っている。

ただどうしても思い出せないんだ。

お金なんて死んでしまったらいくら持っていたって意味がないじゃないか。

話をしてもつまらない、馬鹿な奴ばかりだ。

僕の知っているアイドルの顔はそんなんじゃない。

握手してくれた時の笑顔も。

ステージでキラキラと輝いている瞳も。

知っているはずなのに。

窓のすぐ向こうを電車が通り過ぎる。

古い木造のアパートはギクシャクと揺れ、水道水で沸かした麦茶がくすんだコップの中で小さな波をつくった。

僕はこの時のために生きている。

自分にとって本当に必要なものは何か、大切なものは何か、生きる目的は何か。

3年間の無遅刻無欠勤を評価され、僕は空中を閃く光となって古い木造のアパートは船が軋むような音を立てて揺れ、真理の淵がくすんだコップの中で小さな波をつくった。

ただどうしても思い出せないんだ。

知っているはずなのに。

 

 

 

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