天才をふくんだ食堂

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おはようウルカ。

 

轟々と雨をふくんだ風がふいている。

見上げると、黒い看板に赤い文字で味味と書かれている。

俺は店のドアを開ける。

ランチ営業時間も終盤に差しかかり、客は疎らだ。

いらしゃいませ、お好きのところどうぞ。

ホールを切り盛りしているであろう中華女性は、ランチタイムのピークを乗り切った達成感と安堵感をふくんだ自信に溢れる笑顔で俺を店内へ案内した。

カウンター越しに厨房と料理人が見える。

結んだ頭頂部以外を刈り上げている。

髪の伸び具合をみると、刈り上げてから2ヶ月以上は経過しているであろう。

若干後退した生え際を気にするふうでもないぶっきらぼうな態度は、演技に定評のある渋い映画俳優といった印象だ。

手元には使い込まれた中華鍋が銃器のような鈍い光を放っている。

 

この店は旨い。

俺は席に着くなりそう判断した。

円卓がぐるぐるまわるようななかしこまった高級中華店ではなく、屈強な男共が大盛チャーハンをかっこんでいるようなアンダーグラウンドほどエグい天才がいるものだ。

 

俺はニラ玉と大蒜チャーハンを注文する。

ぶっきらぼうな料理人と中華鍋に火がともった。

奇術師や書道家のような動きには一切の無駄がない。

瞬発的に全てのエネルギーを一点に放出する。

アスリートと芸術家を掛け合わせたような生業だな。

満を持して運ばれてきたニラ玉と大蒜チャーハンは高揚と安らぎと切なさと優しさと強さと愁いと怠慢と強慾と和らぎと傲慢をふくんだ輝きを放っている。

いただきます。

無心にニラ玉と大蒜チャーハンをかっこむ俺をよそに、ぶっきらぼうな料理人はタバコに火をつけた。

さっきまでホールを切り盛りしていた中華女性は店内の柱を使ってポールダンスを始めた。

艶やかでいて激しい。

いつのまにか店先の札が営業中から準備中にひっくり返っている。

カウンターに座っていた男客が立ち上がる。

この時季に暑苦しいコートを着ているな。

振り向いた男の両手には小型のマシンガンが握られている。

ぶっきらぼうな料理人は中華包丁をマシンガン男の額にめがけて投げる。

ポールダンスの中華女性はくるくると天井付近を回転している。

俺は大蒜チャーハンの続きをかっこんだ。

 

ロケ地

愛知県は大府市でひっそりと営業する中華食堂

近隣の方は是非ご賞味あれ

 

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