逆さまに雨

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おはようウルカ。

 

雨が屋根をたたいている。

そのせわしなく点滅するストロボ光のような音は、前庭器官を酔わせる。

横になったまま、暗い宙を上方向に落ちているような感覚。

この星の物を引きつける力が、磁石の極のように逆さまになって、物を引き離す力に変わったとき、我々は空へ向かって落ちる。

人も家も牛も海もガラスの破片のようにめきめきと地面から抜けて落ちるだろう。

全部の瞼を閉じて、半分の意識は眠っている。

最近はアラームをセットする必要がなくなった。

しばらく人間をやっていると、朝目覚める時間くらいはコントロールできるようになるようだ。

俺はベッドのバネの反動で跳び起きる。

非常に高く跳び起きたので、もう少しで天井に鼻をこすりそうになる。

俺はミルクを温めて飲む想像をするが、この部屋にミルクがない事を思い出した。

ミルクなど何年も買った事がない。

牛の乳を飲むことは牛の舌を食べることと同じくらいに抵抗がある。

結局、牛タンは厚切りより薄切りの方が好みだな。

それよりも案山子のバイトの話をしよう。

作り物の人形を田畑に突っ立てているよりも、実物の人間が突っ立っている方が幾らか効果がマシってものだ。

とんがり帽子をかぶれば時給が30円アップする。

硬いアスファルトの上でモデルルームの看板を持って突っ立っているよりも、ぬかるんだ土の上でとんがり帽子をかぶっている方が幾らか気分がマシってものだ。

この星の物を引きつける力が、磁石の極のように逆さまになって、物を引き離す力に変わったとき、我々は空に向かって落ちる。

とんがり帽子も憤りも憂いも哀しみも恐れもガラスの破片のようにめきめきと世界から抜けて落ちるだろう。

俺はドアを開けて外へ出る。

太陽がカンカンと照りつけては首を焼く。

半分濡れた地面が65キログラムの力で俺を引き止めている。

あと、2キログラム痩せようと考えている俺は、引力が斥力に転じた時、63キログラムの力で地面から解き放たれるだろう。

 

 

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