キネったな

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おはようウルカ。

 

キネクルという物質がある。

キネクルは特定の金属を含んだ石を特殊な方法で発酵させることによって作られる。

この物質は人間の触覚、素手を通して体内に取り込む事が出来る。

体内に取り込まれと、大脳新皮質の働きを鈍くすることで、感情や衝動、食欲、性欲などの本能的な部分を司る大脳の古い皮質(旧皮質や辺縁系)の働きが活発になり、精神が高揚する。

摂取方法は簡単で、キネクルが含まれた物体を手で撫でればよい。

歴史は古く、紀元前4,000年頃にはメソポタミア地方のシュメール人が既に撫でていたといわれている。

日本には西暦694年頃に大陸から伝わったとされており、冰(ひょう)という和名で広く人々に広まった。

現代では様々なものに混ぜ合わせて触感を楽しむことができる。

 

同僚のタケ:平山ちゃん、このあと一撫でいかない?

俺:えぇーまたかよ、ここのところ毎晩じゃねぇか。まあ、軽くならいいよ、軽くなら。

 

そういうことになった。

 

ハードな仕事で翼の折れたエンジェルとなっていた俺たちは、行きつけの居冰屋の暖簾をくぐる。

いらっしゃいませ!

お決まりでしたら、お先にお撫でものからご注文をお伺いします!

えーっとじゃあ、僕は肉球割りで。

タケは猫の肉球をリアルに再現した素材にキネクルを8パーセント配合した撫でものを注文する。

俺は枝で。

俺は文字通り木の枝にキネクルが7パーセント配合されたものを注文する。

キネクルの触感は、痺れるような、細かな針で軽く刺されているような刺激がある。

配合率が高ければ高いほど刺激は強くなり、子供の頃はこんな嫌な感触のもの、どうして大人は好きこのんで撫でるのだろうと不思議に思っていた。

居冰屋の壁には、素手ごし、最高!とグラビアアイドルがビーチでキネクル配合のウサギのぬいぐるみを撫でているポスターが貼ってある。

俺たちはちびりちびりと冰を撫でながら、季節はずれのモツ鍋をつついた。

そういえば平山ちゃん、ヨシゾーがハマってたあのキャバクラ、違法キネクルで摘発されたらしいよ、ほら、あの交差点のところの。

えー、違法って何やらかしたんだよ?

なんか女の子の膝にキネクルを配合して客に撫でさせてたらしいよ。

マジか、キネクルって人の膝に配合できんの?

あれって撫でものとして混ぜ合わせるには、一度分子レベルで分解してから結合させるって聞いたけど。

そうだよ、だから一度女の子の膝を分子レベルで分解して…

こわっ、そりゃ摘発されて当然だな。

それにしても今日は少し撫ですぎた。

だいぶキネったよ。

そろそろ帰るか。

明日も適当に頑張ろうぜ。

おおよ。

俺とタケはほろキネ気分で高く手をあげると、あの交差点のところので別れた。

 

 

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