黄色の床の男
こんにちはウルカ。
君の足元のその床と、私の足元のこの床では、色が違うだろう。
君のは青色で、私のは黄色だね。
男はそう言うと、靴の先で黄色の床をトントンと打った。
これはね、文字通り立場の違いなのだよ。
青色の床の上に立っている君は、黄色の床に立っている私には到底およばない。
残念だがそれが君の立場だ。
君の青色の床、厳密に言えばB36だね。
僕の足元の青色の床には端に白い文字でB36とある。
そんな事は僕にだってわかっている。
この国では、屋内は勿論のこと、屋外においても全ての足元に床が整備されている。
この床はその上に立つ人間によって色を変える。
色はその人間の持つ総合的な能力で決まる。
例えば、運動能力や、生命力が低くても、知能や財力が著しく高ければ、総合的な能力は高くなる。
青色から赤色のグラデーション(青→緑→黄→橙→赤)で表現され、能力が高いほど暖色系、要するに赤色に近づく。
単に青色といっても、色相のグラデーションが細かく番号で区分されており、僕のB36というのは、青色でも中の下といったところだ。
街を見渡せば、行き交う人々の殆どの床が青色をしている。
多少の色相の差はあれど、凡人は青色の枠からは出られない。
かなり優秀な人間でも、ほんのりグリーンといった程度だ。
各界のスカウトマンやヘッドハンター達は、この足元の床の色を目印に有能な人材を探す。
飛行機や船、列車などの搭乗順や座席にも反映され、婚活や就活、受験や選挙においても重要な評価項目とされている。
僕の目の前にいる、黄色の床の男が秀でている能力は何だろうか。
黄色い床をひけらかすあたり、人間性や他者を思いやる能力は著しく低そうだ。
僕は不快な気持ちを抑えて男に質問した。
凄いですね!実際に黄色の床の方に会ったのは初めてです。
失礼ですが、どんなご職業なのですか?
男は得意げにこう答えた。
私は能力買取業者だよ。
不要な能力を買って、売る。
シンプルでしょ。
見た所、あなたから買い取れそうな能力はないようだ。
パッとしない人生のまま一生を終えて良いのかい?
能力が欲しければ、特別に優遇するよ。
そうやって黄色の床の男は、文字通り僕の足元をみた。
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