ズレ、ささやか

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おはようウルカ。

 

ホームに電車が滑り込んできた。

俺は電車に乗り込む。

朝、誰もが先を急ぐ時間帯では、乗っている時間が倍となってしまう各駅停車列車を選ぶ人間は少ない。

ゲロ空きである。

俺はのんびりと席に座って、えっちらおっちらと進む鈍行列車が線路を踏む感触を楽しみに、出発を待っている。

不人気なのに良いものが好きだな。

良いものは大抵人気がある。

皆が良いと思うからこそ、それは良いものとなる。

良いものであるからこそ、皆が良いと思う。

人気があるものは良いもの。

これは大変見分けやすい目印であり、手っ取り早く良いものに辿り着きたければ、人気を辿ればいい。

自分は他人とは違うなどと他人と同じことを考えて生きている人間なんて、大体似たような感覚や生活スタイルで生きているわけで、良いと思うもののズレなど微々たるものだ。

アフリカに棲むゾウと、北極に棲む白いクマの嗜好性ほどのズレはないだろう。

 

それでも稀に、状況や環境、感覚などのズレから、不人気なものであるにもかかわらず、自分にとってはとても良いものに遭遇する事がある。

今朝は鈍行列車で旅をするように、のんびりと、豊かに、朗らかに、出勤しよう。

そんな、微々たる、ささやかなズレを愉しんでいると、車内アナウンスがこう告げた。

 「この列車は当駅止まりの回送列車です。ご乗車にならないようにお願いします」

清掃にまわってきた鉄道員の両目から放射された早よ降りろや光線が、俺を焼いた。

 

 

 

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