解答となる私

f:id:maxm:20190909090537j:image

こんにちはウルカ。

 

次の解答から問いを作成してください。

・3

・ヒトイキレ

・摩擦

・Angular

・正子は青を選ぶ

真鯛

・36.529

檸檬または煙草

・シルバーのライン

・石

・C9H13NO3

 

解答だけが羅列された試験用紙。

私は採用筆記試験を受けている。

残り時間は6年。

 

応募ありがとうございます。

それでは、これから採用試験を受けていただきます。

履歴書をカバンに入れて、面接に訪れた私は、会議室のような場所に案内され、そう告げられた。

既に30人余りが席についていた。

 

職業安定所の求人広告で見つけた募集要項。

急募

日当48000円

ボタンを押すだけの簡単な仕事

性別年齢不問

東京拘置所

 

試験官は僧侶のような姿勢でパイプ椅子に座り、防犯カメラのような動きで万遍なく試験会場を監視している。

募集要項にあるボタンを押すだけの簡単な仕事、異常に高額な日当、東京拘置所ということから、職務内容はなんとなくは察しがついていた。

 

試験会場の時計の針は、午後5時に差し掛かろうとしている。

私は一つも解答できずにいる。

要するに、一つも問うことが出来ずにいる。

単純に解答に直結するような問いでは、人間らしさに欠ける。

私にはそれが許せない。

それは私の問い、すなわち解答ではない。

 

半年前、馬鹿らしくなって16年勤めた会社を辞めた。

この半年間、自分を見つめ直してきた。

自分はこれから何をしてどのように生きていくべきか。

結局、答えは出ていない。

失業保険の支給も来月で終了となる。

私は自分に対しても、この試験に対しても、何も答えられないのか。

 

ブザーが鳴る。

試験官が立ち上がり、口を開いた。

休憩時間です。

一旦試験用紙を回収します。

試験再開は明日の午前10時からとなります。

明朝9時45分までにこの部屋に集合してください。

試験期間中は皆様の食事と睡眠場所を提供いたします。

但し、この施設より外に出られると、試験を放棄したとみなします。

再度試験を受けることはできませんので、ご留意ください。

試験官はそう告げると、私たちを食堂に案内した。

質素な食事だが、最低限の栄養はとれそうだ。

食堂にはTVがあり、公共放送が映し出されている。

食事が終わると、独房に少し手を入れた程度の部屋に案内される。

簡易式のユニットバスと、頼りないベッドがある。

それだけの部屋だった。

私は試験終了までの6年間、ここで過ごすことになる。

まあ、それもいいか...

私はそう呟くと、ベッドに横になり、天井を見つめた。

6年後、私は何かの問い、すなわち解答に行き着くことができるのだろうか。

私の問い、すなわち解答は、どのように採点され、合否を決められるのだろうか。

 

眠りに落ちていくことがわかる。

この半年の間、私は私の人生について自分に問いかけてきた。

しかし、それは間違っていたのかもしれない。

先ほどの試験のように、私という解答に対して、問いを作成することが正しい順番なのではないか。

だとすると、私は何を問えば良い?

解答となる私とは一体、なんなんだ?

 

ブザーが鳴る。

 

私は洗面所で顔を洗うと、独房に少し手を入れた程度の部屋のドアを開ける。

同じように、其々の部屋から出てきた人々の影が、壁にあたる光の存在を肯定している。

私たちは、ぞろぞろと同じ方向へ歩きはじめた。

 

 

今日のニュース

73歳女性、元気な双子の女児を出産。世界最高年齢の初産記録に(インド)

アパート近くの埋め立て地から、行方不明者のものとみられる2千以上のバラバラになった人骨が発見される(メキシコ)

ネッシーは巨大ウナギかもしれない!?科学者による大規模調査で新たなる展開(ニュージーランド

ウルカはデュビアを6匹