解放厳禁

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こんにちはウルカ。

 

昼から夜にスライドがはじまるころ。

オートバイで湾岸道路をはしっている。

ドルドルとエンジンが振動して、丈夫なゴム製のタイヤがアスファルトを蹴る。

空を映した青赤色の海面が遠くにみえる。

月曜から3日目の今日はよく晴れた。

風が少しつめたい。

型の古い銀色の外国車が、大量の白黒い煙をボンネットの隙間からふき出しながら走っている。

追い抜きざま、サングラスをかけたドライバーの男がみえた。

ステアリングにのせた指でリズムをとりながら、何かを歌っているようだった。

この道は海へつづいている。

サングラスの男もきっと海へ向かっているのだろう。

30キロメートル程はしると、波に削られたような海辺の町がパラパラとはじまる。

祭りでもあるのだろうか、飾り付けられた赤い提灯が海風で揺れている。

今夜はこの町で宿をとろうか。

廃業したパチンコ屋の隣に、食堂・民宿と書かれた建物がみえる。

俺はその建物の前まで行くと、オートバイをとめ、両腕をあげるような格好で伸びをした。

ひび割れた壁に海水魚の絵がペンキで描かれている。

営業中と書かれた看板だけがヤケにまあたらしい。

ガラスがはめ込まれた扉ごしに灯りがもれており、中では数人の客がビールの注がれたグラスを片手に赤ら顔で談笑しているのがみえる。

カウンターのなかでは、店主らしき恰幅の良い男が何やら調理をしているようだ。

 

「解放厳禁」

と書かれたプレートが、扉に貼り付けられている。

「開放厳禁」の間違いかな...

俺は、扉の取っ手を掴むと、力を加減しながらソロリと扉を引いた。

扉はビクともしない。

思い切り力をこめてみる。

押してみる。

左右上下にスライドしてみる。

結果は同じだった。

扉は思いのほかしっかりとしたつくりで、揺らしてみると少しのガタつきもない事がわかる。

鍵がかかっているのか?

 「すみませーん!」

 「すみませーん!おーい!」

結構なボリュームで声をかけるが、中の人々がこちらに気がつく様子はない。

まあ、いいや、他所へ行こう...

此処でなくてはならない理由は俺には一つもない。

俺はなんとなくあきらめると、オートバイに跨る。

キーを回しエンジンをかけると、波の音の手前にオートバイの排気音が重なった。

水平線に埋まりそうな太陽が、最後の光を投げている。

解放厳禁か。

この町の人々は、そうやって生きてきて、これからもそうやって生きていくのかもしれないな。

それは、とても良いことのように思えて、俺はなんだか羨ましいような気持ちで、今にも潮で崩れ落ちそうな町を、オートバイではしりぬけた。

飾り付けられた赤い提灯が、海風で揺れていた。

 

 

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