タフなババア
こんにちはウルカ。
近所に、一軒家ふたつ分くらいの空き地があって、土が見えないほど色々な種類の雑草が茂っている。
中にはクワ、ヤブガラシ、オオバコなど、草食爬虫類飼いの間では宝物と言われている野草の姿もチラホラ。
これらの野草は、人間が食用としている野菜と比べ、低カロリー、高カルシウムであり、栄養バランスは最高峰。
その宝物が、近所の空き地に、文字通り野放しの状態なのである。
これは、なんとしても手に入れたい。
勝手に空き地に分け入って、野草狩りをしてもきっと問題ないだろう。
それどころか、雑草を処理してくれた尊い人として祭り上げ、崇められるかもしれない。
いやいや、まてよ、雑草だらけの空き地と見せかけて、宝物野草農園かもしれない。
だとすれば、不法侵入の盗人として、血祭りに上げられるかもしれんぞ。
土地の持ち主に野草・テイク・フリー・パスポートを発行してもらうのが正攻法だろう。
俺は、空き地の周辺を行き交う人々にヒアリングを始める。
不審なオーラを極力抑えようと愛想笑いを浮かべるが、逆に不審者極まりない状態となってしまった。
「良い天気ですねぇ、ここの空き地はずっと空き地ですよねぇ、良い場所なのにもったいないなぁ、持ち主とかって誰なんすかねぇ〜?」
通行人1(主婦?)「し、知らないです」
通行人2(ガキ)「知らなーい、おじさん、だれー?」
通行人3(外国人)「シラナイアルヨ」
4人目に声をかけたババアが、こう答えた。
「あたしだよ、あんた、買ってくれんのかい?」
「えっ、そ、そうなんすか?いやいや、こんな広大な良い土地、買えるような甲斐性ないっすよ〜」
「いやね、あの雑草、うちのカメに食べさせたいなって」
俺は面倒な嘘はつかず、正直に言った。
ただ、宝物野草のことを伏せた俺はやっぱりずるい奴だ。
「ん?カメ?こんな草を食べるのかい?こんなもんいらないから好きなだけ持ってって良いよ。火をつけて燃やしてやりたいところだけど、こんな住宅地じゃあ他所に火が移ったら大変だからね」
「お、イイんすか!あざっす!やったー」
「おにいちゃん、ここに柵でも作ってカメ放したら、草食べ放題でカメも喜ぶんじゃないかい?ほら、なんて言ったっけ?あの犬を放せる広場」
「ああ、ドッグ・ランですね、カメだからタートル・ラン。それ名案ですね!イイんすか?!」
「ああ、良いよ、一坪80まんえんでどうだい?安いもんだろ?」
ば、ババア...
「良い商売になるかもしれないね、入場料とってさ、そん時はあたしにも何割かちょうだいよ、ほら、この草はあたしが根付かせて育てたようなもんだからさぁ」
ば、ババア...
「あははは〜おばあちゃん、冗談きついな〜」
「ん?冗談?まあ、草持ってくなら、その辺の空き缶も拾ってくれると助かるよ、あたしは腰が悪くてね」
そう言い残すと、ババアはスタスタとアスリート並みの力強い足取りで去っていった。
俺は不器用な愛想笑いで、ババアをみおくった。
なんとか、野草・テイク・フリー・パスポートはゲットした。
つもりでいる...
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