傳力
こんにちはウルカ。
床が腐葉土で座席は苔の生えた岩や樹木の根、吊革や荷棚は絡み合う枝や蔓。
手洗いは3号車にある滝。
ネイチャー・トレインには、猿や鳥やカモシカなどの動物も同乗する。
ゴロゴロと転がる丸太の車輪は、意外に安定していて、振動が心地よい。
アウトドア・ウェアに身を包んだサラリーマンやサラリーウーマン、スチューデントやヴァガボンドが、動植物たちと移動している。
外はジャングル。
しかし、よく見ると樹々や土や岩などが都合よく建物や道路や広場を形成しており、人間が快適に過ごせる街となっている。
人類は新たなエネルギーとして、傳力を発明した。
傳力は動植物に限らず、自然界に意思を伝え、交渉し、人間の都合の良い状況に操作する力である。
樹々をビルや住居の形に茂らせ、大型動物に岩を運んでもらい、洪水や土砂崩れ、地震を操ることで、理想の地形を構築する。
この傳力の発明は、人類が自然と共存する上で、大きなターニング・ポイントとなった。
現在では地球の約半分の都市が、完全に自然に溶け込んでいる。
傳力会社は大勢の傳師と高額なギャランティーで契約した。
今や、医者やパイロットやYOUチューバーやキャバ嬢やお花屋さんをおさえて、傳師が人気ナンバーワンの職業である。
傳師を目指す若い学生達は、傳力を学ぶため、文字通り木でできた大学へ小鳥やスロウロリスなどを肩に乗せて通っている。
夜になると、自然と人類が共同で開発したライト・バルーンがあちこちを浮遊し、街をきらびやかにライト・アップする。
俺はネイチャー・トレインを降りると、駅前の洞窟にある酒場を目指す。
肩で、ウルカが大きなあくびをした。
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