面として僕に対に対面と面として面の僕に
こんばんはウルカ。
クモハ289ー303に乗っている。
バッグから丸めたナイロン製の上着を取り出して羽織る。
雲が、大陸のように空にある。
雲色の大陸を太陽が半ば透過するように照らしている。
太陽は、雲よりも随分と小さいものだと思っていたけれど、反対で、雲など比べ物にならないほどに太陽は大きいらしい。
遠くに見えるあの親指くらいの樹木が、本当は見上げるほどに高いのと同じことなのだそうだ。
この足元の陸とあの雲では、どちらが大きいのだろう。
本当はとても大きなものも、遠く離れれば小さくなる。
それは目に見える大きさだけでは無くて、音も、匂いも、温度も、優しさも、悪意も、哀しみも、愉快も、痙攣も、病も、狂気も、過去も、行く末も。
距離は大きさや強さを調節してくれる。
なのに、このタブレット端末の中にある情報や、人いきれは、どれも同じ距離で、目の前に在るか、全く無しかのどちらかだ。
タブレット端末を少し遠ざけてみたけれど、文字や映像を僕の目が解像できなくなっただけで、情報も、人いきれも、ざわざわと全く同じ距離で横一列に、縦一列に、またはその両方に並んで面として僕に対面している。
僕は恐ろしくなって、タブレット端末の電源をoffにする。
ブラックアウトした画面には、眩しそうな、泣きそうな、笑いそうな僕が、いつもと同じくらいの距離で映っている。
僕は僕と面として対面しながら、 眩しそうな、泣きそうな、笑いそうな僕を、少しだけ近づけてみた。
すると僕の面と面の僕は、面と面とで僕に対に面と面として僕と対に対面と面して面として僕に対面と面して僕に面と面とが面と面とで対面として僕に対に対面と面とした面とで僕に対に対面したい面としても僕に対面と面と面として面とて面の僕が対面と面を対面として面が僕に対して面の僕は対面と面で面とで僕に対面したい面と面としても僕に面と対に対に対に僕に対に対面した。
クモハ289ー303に乗っている。
羽織っていたナイロン製の上着を丸めてバッグにいれる。
雲が、大陸のように空にある。
雲色の大陸を太陽が半ば透過するように照らしている。
クモハ289ー303は少しの振動を僕に伝えながら、僕の知らない街を進んだ。
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