もう、十字架

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こんばんはウルカ。

 

先ず、とても社会的かつ野生的な色の封筒、そう、薄いブルー・アンド・グリーンの封筒がデスクにそっと置かれる。

クリスマスの朝の目覚めのようなトキメキを感じながら、俺は封筒を開けると日取りをチェック・イット・アウトする。

なる程、きっかり2週間後か。

少なくともあと4キログラムの減量が必要だな。

そうとなれば、こうはしていられない。

俺は隣に座る同僚のタケに、ちからいっぱいデコピンをかますと、うぉぉと職場を飛び出す。

そのまま、うぉぉぉと街を駆け抜けて森へ入り、枯れ枝と枯れ葉で小屋を建て、目の前の小川にて、街を駆け抜ける途中の上州屋で購入した竿と糸と針となんか気持ちの悪い餌蟲で釣りをして、焚き火をおこし、シダ植物の葉を皿にして焼き魚を喰い、木に登り、野を駆け、谷へおり、東急ハンズで購入した金属製のブーメランで狩をして動物性タンパク質を摂れば、大声で知っている限りの歌をうたい尽くす。

そうこうしているうちにあっという間に2週間が経過する。

俺は隣に座る狩猟仲間の日本猿の与五郎に、ちからいっぱいデコピンをかますと、うぉぉと小屋を飛び出す。

そのまま、うぉぉぉと森を駆け抜けて街へ入り、都電に飛び乗り会場へと向かう。

会場に入ると、明るくも暗い照明、白くも黒い壁に囲まれた部屋で、両足を自分の肩にかけた体勢で20年以上生活し続けているサドゥーが瞑想をしていたり、刃の先にゴープロを取り付けた剣を飲み込む奇人、小さめのボストンバッグに自ら入り、顔だけを出して跳ねまわる賢者などか、今か今かと受付に並んでいる。

猛者達は次々とエントリーを済ませて暗黒カーテンの奥へと消えてゆく。

そして、とうとう俺の番がやってくる。

受付のメスのヴァンパイアが俺から封筒を取りあげると書類を取り出し、気怠そうに確認する、それから俺の頸動脈に恨めしそうな視線をおくりながらこう言う。

「本日の胃部レントゲン検査はキャンセルでよろしいですか?本当に?」

俺は獰猛な猛禽類のような目を光らせながらこう言ってやる予定だ。

「はい、バリウムが、苦手なんです」

ああ、もうこんな時間だ、明日の受付に遅刻しないようにそろそろ風呂に入ろうかな。

 

 

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