クラマ
こんばんはウルカ。
クラマは、古くから人間の移動手段として、住居として、家畜として、ペットとして、友人として、奴隷として、ビジネスパートナーとして、寄り添うように共存してきた。
クラマは、種により様々であるが50年から80年ほど生きる。
中には300年以上生きる種もある。
クラマは、総じて単為生殖の卵生であり、直径1.5mほどの卵から孵化すると、すぐに時速70km以上の速さで移動する事が可能である。
現在の地球環境ではクラマの卵を自然孵化させることは不可能であり、専門の施設と技術を持ったブリーダーが全国に点在している。
対人間、クラマ同士のコミュニケーションは光、または闇を振動させることでおこなう。
知能は非常に高く、知能指数は人間の8倍とも言われている。
感情は無く、醜美、善悪という概念ももたない。
人間がこの、光または闇の振動を利用したコミュニケーション、通称モルクを修得し、クラマを運転するにはそれなりの訓練が必要となる。
現在この国では免許制度を採用しており、満15才になると訓練学校へ通い、クラマの飼育法、モルク2級、クラマの運転法を学び、学科、実技試験にパスし、国家資格を有したものだけが、クラマと契約を結ぶ事ができる。
人間がクラマを所有することは出来ない。
クラマと個々に契約を交わすことで、ともに生活をする。
契約内容は多岐にわたり、契約を仲介する業者が全国に点在している。
クラマは、餌や環境、運動や経験、モルクでの接し方で、大きく形態をかえる。
陸クラマが空や海クラマに、移動クラマが住居や要塞、遊具クラマとなることも珍しくはない。
中でも攻撃や防衛に使用される軍用クラマはグロテスクで邪悪な容姿をしている。
なんでも共食いをさせて育てているとか、いないとか。
「雨か…。わるい、入り口までこれるか?」
この時期は青く発光する硫酸雨がよく降る。
俺は職場のある高層クラマを出ると、10年来のツレである移動に特化した銀色の陸クラマとモルクを使って交信する。
「わかった」
そう答えると、肺活量4000万ccのパワフルなクラマはあっという間に駐クラマ場から高層クラマのエントランス・ロータリーまでかけつけてくれる。
それから俺は硫酸雨をものともしない美しい銀色の体毛をしたクラマに喰われる。
喰われた俺はクラマの体内で消化され、血液となり、クラマが単体では持たないとされている感情となる。
感情となった俺は、感情を操舵力として使い、クラマをコントロール、要するに運転する。
当然、運転には感情を異常に昂らせたり、捻じ曲げるような酒、薬物の使用は固く禁じられている。
青く発光する硫酸雨の降る夜道を、俺となった銀色のクラマと、銀色のクラマとなった俺が駆ける。
「雨だな」
「そうだね」
「暗い闇だな」
「そうだね」
「美しい光だな」
「そうかな」
「良い夜だな」
「そうかな」
「雨だな」
「そうだね」
「暗い闇だな」
「そうだね、闇は光を照らすよ」
「美しい光だな」
「そうだね、光は美しくて美しさは光らないよ」
「腹が減ったな」
「うん、腹が減った」
「良い夜だな」
「うん、良い夜だね」
俺となった銀色のクラマと、銀色のクラマとなった俺は、硫酸雨の青い光と、その前後の闇を振動させては背後へとなげた。
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