バタバタ
こんばんはウルカ。
年の瀬だね!
年末になると何故こうもバタバタとするのだろう。
尋常ではないほどのマイペースな社会人として有名な俺を以ってしても、やっぱりバタバタしてしまっている。
メールは登っても登っても増える永遠の階段のように未読が積み重なり、電話はドンキ・ホーテのテーマソングみたいに鳴りっぱなし。
会社内をふらつけば「平山さん、ちょっといいですか?」「平山さん、急で申し訳ないんだけど」「平山さん、ごめん、もう一件いそぎの案件が入った!」「平山さん、もうだめだ…」とテンパった皆様から声をかけられる。
もうね、いやなの。
俺はね、のんびりと過ごしたいのよ。
「平山さん、、」
なに!?
これ以上、仕事入れられても俺はやらんぞ!
年の瀬マザーファッカーズってバンドを組もうって話ならのってもいいぜ!?あああ!?
「いや、昼飯、いかない?」
お、おお、それはいこう。
まあ、もう夜だけどな!ははは!
「いやね、この近くに面白い店、みつけたのよ」
おお、いいね、いこいこ。こんな所にいたら年の瀬に殺されそうだよ。
俺を時季外れの昼食に誘ってくれたポチョムキン向井は、グルメ将軍という異名を持ち、一食、一食を魂を削るかの如く吟味し、嗜む。
その姿勢は俺が最も尊敬する人間のひとりとして俺の心の中で燦然と輝いている。
まあ、ちょっとハゲ始めてるから輝いているだけかも知れんが。
若くして髪を失う事など、彼はちっとも気にしていないようだ。
旨いものを食う。
ほかに大事な事などあるか?
人生で食事ができる回数は限られている。
病気や事故にでも遭ったなら、明日にも旨さを感じる事が出来なくなっていまうかもしれない。
一食、一食を大切にしろ。
生きることとは、食い物を旨いと思える自分に感謝することだ。
と言っていたかどうかは忘れたが、それくらいの気迫で旨いメシに誘ってくれる、ポチョムキン向井は、俺のオアシスであり、ライフ・セーバーである。
明日はどっちだ!?とオフィス・ビルを勢いよく飛び出した俺たちの前に立ちはだかった全裸、いや、透明ビニルをまとった男の話をこれからするには夜が更けすぎたし、ポチョムキン向井が見つけてきた土瓶蒸し専門店が旨すぎるから、今夜はこれくらいにしておこう。
別にバタバタしているわけではない。
バタバタは。
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