茫然モノサシ
こんばんはウルカ。
街を歩いている。
俺の家にいるデュビアの大群よりも遥かに夥しい人間の群れがモシャ〜と蠢いている。
宝くじ売り場に、喫煙スペースに、駅ビルや街路樹やいかがわしいネオンの灯りやバス停や自転車置き場に。
横断歩道のシマシマが、点滅する緑青色の信号の光を反射して、人々を尚更不気味に演出している。
中でも何故か独りで笑いながら横断歩道を走っている奴は、とびきりキモく見えるな。
何が面白いのだろう。
毎朝、俺にピンセットで摘まれて輪廻転生するデュビアと、街ゆく人々の生命は、どのくらいに価値が違うのだろう。
街ゆく人々が俺にとってピンセットで摘まめるサイズだった場合、デュビアと同じ生命のサイズ感になるのかな。
人間は物理的なサイズよりも、知能の高さや感情の有無、変な思い入れやオーラ?で生命の価値をはかる傾向にあるけど、なんだか身勝手な物差しだよな。
まあ、他の種族から人間に対しても好き勝手な物差しがあるのだろうからお互い様かね。
そんなことで、茫然と横断歩道を渡っていると、緑青信号が点滅をはじめた。
横を見ると、猛獣のようなスポーツカーがエンジンに火を入れて今にも爆発しそうに膨張をしている。
俺は向こう岸を目指して走り出す。
いつの間にか、何故か、俺は横断歩道を走りながら笑っている。
そのまま笑顔で向こう岸にゴールして、慌てて真顔に戻す。
横断歩道を走ってわたる時、笑っている奴はとびきりキモいけど、自分の生命をわりと大事に楽しんでいる奴ではないかと思う。
そういう事にしておこう。
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