クソみたいな糞

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こんにちはウルカ。

 

以前にも書いたことがあるかもしれんが、今日を休日と名付けてしまうと、本当に、ただただ、休むばかりの、ほぼ意識を失ったも同然の今日となってしまう。

言葉の力というものは本当にすごいね。

とくに名付けるという人間特有の行動は、ライセンス制にした方が良いと思うな。

休日。

まあ、そんな日があっても良いのだろうが、過去を振り返らない、未来を見据えない事で有名な俺としては、極力今日を有意識で過ごしたいものだ。

それなのに、今朝のしょうもない同僚との電話の中で、うっかり言ってしまった。

「ああ、今日、俺、休みなんだよね。」

なんという失態。

「今日、俺、休み」という俺が発した言葉は、ゾロリゾロリと俺の背中を這いまわった後、俺の首をつきやぶり、再び俺の中へと潜る。

俺は自分の首にあいた大きな穴から吹きだす鮮血を見ないように、ソファへ倒れ込む。

遠のいた意識の中で、思う。

ああ、せめてコンビニエンス・ストアへ行って、酒と魚肉ソーセージと硬めの卵プリンなどを買い、地図の本とか本当にあったこわぁい話の本とかを立読みして、人間であるという事を実感しておくか…

 

今日は雨が降るそうだ。

俺は呆然とタイトめな部屋着のポケットにスマートフォンだけを突っ込むと、スリッパとサンダルの中間みたいな履物を履き、近所のコンビニエンス・ストアへ、リビング・デッド歩きで向かう。

傘など、持つわけもない。

そもそも、うちに傘のストックがあるのか否かすら朧げである。

それよりも、リビング・デッドが傘をさしていたら、ロメロさんもびっくりの演出となってしまう。

巨匠を驚かせるには俺はまだまだ役不足というものだ。

とにかく、リビング・デッド歩きでアスファルトをガオォ、ガルルと歩いていると、ボツリと雨が降ってきた。と思ったら、それは鳥の糞であり、俺のタイトめな部屋着に前衛的な花火を咲かせた。

ありがとう、野生の鳥よ。

俺は休日という言葉の呪縛から抜け出し、意識を取り戻したよ、あなたのクソみたいな糞のおかげで。

ドス紫の屍色だった俺は、一気にサーモン・ビーチ色になって、うぉぉぉぉと走り出す。

コンビニエンス・ストアなどにめもくれないぜ。

タイトめな部屋着にスリッパとサンダルの中間の履物と鳥の糞散らしという、下町のおじいちゃんもびっくりのスタイルだ。

人生の大先輩を驚かせるにはまだまだ若輩者ではありますが、そのまま2600メートル程を走り抜け、イタリアン風を前面に押し出したファミリー・レストランにはいる。

いらっしゃい…ま…せ…

「はぁ、はぁ…1人です、デカンタワイン白500mlと、羊の肉を焼いたやつ、ください。はい、アルコールは問題ありません、如何なる乗り物も運転しておりませんので、もしも俺のこの身体も乗り物に含まれるというのであらば、この国はアルコールを全面的に法で禁じなければなりません。あはは、これですか?鳥はいいですね、自由で、おかげで目が覚めました。」

これを3秒くらいの早口で言えた俺は完全に意識を取り戻したと言っても過言ではないだろう。

席に着く。

時間外れの店内は空いている。

斜め隣の席には小さな男の子と、若いママがピッツァを食べている。

男の子は数歳、ママは二十代半ばくらいだろうか。

男の子は元気よく、びゃーびゃーと騒いでいる。

こら、静かにしなさいと言うママの表情は暗い。

若いのに、苦労しているのだろうか…

鳥糞まみれの俺よりはマシだぜきっと。ほら、笑って笑って…

 

 

お待たせ致しました、デカンタワイン白500mlと、羊の肉を焼いたやつです、ごゆっくりどうぞ。

注文の品がきた。

ああ、また意識が遠のいていたようだ。

俺は斜め隣の席をみる、男の子と疲れた若いママは既にいなくなっている。

かわりに爆発する寸前みたいに太った野郎が、ミラノドリア風を注文するところだった。

俺は野郎が爆発してミラノドリア風を撒き散らす前に退散しようと、リビング・デッドばりにデカンタワイン白500mlと、羊の肉を焼いたやつを貪り喰った。

帰りに雨とか糞が降っても、タクシーなんかに乗らないぞ。

少しでも今日を感じたいからな。

 

 

 

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