ギィ、ギィ、ギィギィ
こんにちはウルカ。
私は、「ポン酢にしばらく浮気していたけど、やっぱり醤油が最高ってことに気がついた」ってツイートした後、「変な女に尾けられてる、こわい」ってツイートした。
異様に首のまがった女が、追ってくる。
長く伸ばした前髪で顔ははっきりとは見えない。
白髪が目立つけど、肌の感じや身のこなしから、まだ若そう。
30代くらい?
今年28歳になる私とそれ程変わらないと思う。
会社帰り、駅のホームで電車を待っていると、すぐ後ろでギィ、ギィ、ギィギィって音がした。
何だろうって振り返ると、その女が触れそうなくらい私に顔を近づけて、凄く小刻みに身体を揺すっていた。
震えてるんじゃなくて、凄く小刻みに揺すってるの。
私は怖くなって、場所を移動する。
電車がきて、乗る。
帰宅ラッシュは少し落ち着いた時間だったから、座れないまでも、人と人が押しあうという程ではなかった。
私はドアの近くに場所を確保した。
スマートフォンでSNSをみたり、気になっているバッグを調べたり。
車内アナウンスが私の降りる駅を告げる。
今日も疲れたな。
毎日、毎日、同じ顔ぶれと仕事するのって本当に疲れる。
これから10年とか20年とかこれが続くなんて、そんなの無理だよ。
ギィ、ギィ、ギィギィギィ
すぐ後ろであの音がした。
怖くて振り返る事が出来ない。
窓の外で、私の住む街の風景が流れる。
私はドアが開いたらすぐに飛び出せるように、ドアに擦り寄る。
私の目は、窓の外を流れる見慣れた街並みから、窓に映る私自身にピントを移動させる。
緊張した私の顔。
そのすぐ後ろに女の顔があった。
ギィギィ、ギィギィ、ギィギィ
その音が歯軋りだとわかったのは、窓に映った女が歯を剥き出して、強い力で擦り合わせているのが見えたから。
ギィギィと歯を擦り合わせながら、小刻みに身体を揺すっている。
ホームに到着した電車がドアを開放した。
私は勢いよく飛び出し、振り返らず、階段を駆け上がる。
駅裏の自転車置場を越えると、街灯も疎らで人通りも少ない。
自転車置場のやたらと青いライトは犯罪抑止効果があるって記事を読んだ事がある。
振り返る。
異様に首のまがった女がフラフラと駅の階段を降りているのが見える。
私との距離は150メートル以上ありそう。
あのフラフラとした足取りなら、私に追いつく事は出来ないだろう。
私は少し安堵して、それでも早足に、彼氏と同棲しているマンションを目指す。
彼、帰ってるかな…
彼氏にLINEする。
もう、家?
すぐに返事がくる。
駅前で平山ちゃんとのんでるー!
写真も送られてくる。
やましい事ないですアピールかよ。
なんだ…駅前にいたのなら合流すれば良かったな…
今日は独りで部屋に帰るのは心細い。
彼が送ってきた写真を見る。
楽しそうな彼と同僚の平山さん。
いつものメンバー。
でも、見つけたの。
そのすぐ後ろの席に、あの女が座っている。
首が異様にまがった、白髪の。
俺は、同僚のタケと駅前で飲んでいる。
タケが赤ら顔で言った。
平山ちゃん、なんか彼女が合流したがってるんだけど、良い?
店変えて欲しいって。
ああ、みっちゃん?いいけど、なんで店変えんの?
わからん、なんか、そこはヤバいって。
ははは、なんだそりゃあ。
ふと、店内の音楽が途切れる。
俺たちのすぐ後ろで、音がした。
ギィ、ギィギィ、ギィ、ギィギィ
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