2019-08-01から1ヶ月間の記事一覧

ボタンを押すだけの簡単な仕事です

こんにちはウルカ。 喧騒が太陽に反射して、空気を撼わす。 やんわりと揺れる街路樹が、それを宥める。 その動きは母親が眠っている子にあおぐ団扇のようだね。 街でガラスの欠片を拾っては、裸の電球にはりつけている。 ひと月ほどかけて完成させた電球を、…

カナリア

こんばんはウルカ。 今日はえらく忙しかったので、こんな時間になってしまったよ。 今日が終わってしまう前に、カナリアの話でもしようか。 カナリアが囀っている。 朝露が草を湿らせて生命を強調している。 カナリアは、海を越えた遠い国々ではその美しい容…

みんなさようなら

こんにちはウルカ。 線路に遺棄された自転車が雨に濡れている。 空調がギリギリと音を立てている。 子供達はブンブンと夏を振りまわして、夏が消耗してなくなってしまう事を恐れない。 腕時計を見る。 深いグリーンのサブ・マリーナーは、かつて恋人から贈ら…

みじけえよ

こんにちはウルカ。 写真は寿命160年以上とされるカメ。 現在5歳。 飼うには一人じゃ無理だな。 ペットは死別が寂しいから、犬とか平均寿命50年くらいにならんかね。 グレート・デンなんて平均寿命5年だってよ。 うちの犬も今年で13歳。 大型犬とし…

破片のような食事

こんばんはウルカ。 ページをめくっている。 沢山の文字が印刷されたページは、全くと言っても良いほどの同じ大きさの紙が重なっていて、本というメディアを形成している。 一冊の文字データ量は5メガバイト程度。 人間が文字から情報を読み込むスピードは…

ラベル

こんにちはウルカ。 瓶ビール。 栓を抜いた瓶に、逆さにした小振りのグラスを被せて片手ではいよと出す店が好きだ。 最近なかなか無いね。 ビールの瓶のラベルをみる。 原材料 : 麦芽(外国製造または国内製造) とある。 それ以外、何処で製造するというの…

妥当に理不尽なマシュマロ

アンビエント・ミュージックというものがある。 作曲家や演奏者の意図を主張したり、聴くことを強制したりせず、その場に漂う空気のように存在し、それを耳にした人の気持ちを開放的にすることを目的にしている。 このアンビエント・ミュージックを、爆音で…

最終形の人間

こんにちはウルカ。 芸術は、生まれ持ったものを他からの影響を受けないように自分自身から引っぱり出す行為。 他者にみせたり、評価されるつもりで吐き出してはならない。 作品は、他者、さらに自分自身が、魅力的だと感じるものである必要はない。 鍛える…

イケダーヌ

おはようウルカ。 ガラガラと室外機が不調をうったえている。 大抵、室外機の悲鳴は当の住人には届かず、隣人からの苦情として間接的に伝えられる。 僕はインターホンを押した。 応答はない。 室内には灯りがついており、歩き回る音も聞こえる。 控えめにド…

馴染まないさがし

こんにちはウルカ。 いつものように自転車で駅に向かう。 今日も暑くなりそうだ。 交差点で信号待ちをする。 角のたばこ屋のおばあちゃんは今日も和かだな。 軽く会釈をすると、おばあちゃんはにこにこと手に持ったスマートフォンを俺に見せた。 最近はお年…

ズレ、ささやか

おはようウルカ。 ホームに電車が滑り込んできた。 俺は電車に乗り込む。 朝、誰もが先を急ぐ時間帯では、乗っている時間が倍となってしまう各駅停車列車を選ぶ人間は少ない。 ゲロ空きである。 俺はのんびりと席に座って、えっちらおっちらと進む鈍行列車が…

ごっこ

おはようウルカ。 どちらまで? おまかせします。 え? 行き先はおまかせします。 お客さん、こまりますよ、僕の仕事はお客さんの行きたい場所へ、お客さんを安全にお連れすることです。 行き先を言ってもらわなくては、出発できませんよ。 そうですか、それ…

鉄の森

おはようウルカ。 鉄骨が空を区切っている。 鉄の枝を掴むと錆びた鉄の皮が手に刺さる。 あと、熱い。 今日のニュース 母親にスマホを没収された少女、ゲーム機を経てついにはスマート冷蔵庫からツイート 頭にブラウン管テレビを被った男が、民家の軒先に旧…

言葉の整理

おはようウルカ。 今日は仕事をしない日だ。 仕事をしない日を休む日、つまり休日と呼ぶと、なんだか一日中休んでしまう。 言葉の力はなかなか強いね。 気持ちを具体化する道具として言葉を手にいれたけど、今では言葉を気持ちで具体化している。 ウルカ、お…

黄色の床の男

こんにちはウルカ。 君の足元のその床と、私の足元のこの床では、色が違うだろう。 君のは青色で、私のは黄色だね。 男はそう言うと、靴の先で黄色の床をトントンと打った。 これはね、文字通り立場の違いなのだよ。 青色の床の上に立っている君は、黄色の床…

お前、だれだよ

おはようウルカ。 暴風雨の朝、全ての窓を開けてカーテンを狂っようにはためかせる。 雨を浴びたテレビがバチバチと調子が悪そうに青い天気図を映し出している。 雨風が暴れる部屋のソファに座ってトマトジュースを飲んでいると、スマートフォンが発光して着…

ピュアな青アゴ

こんにちはウルカ。 私は幼少の頃より磨く事が堪らなく好きだった。 石や金属片、ガラス玉、ニスの塗られた椅子の脚。 大人になると、磨く職業を転々とした。 靴、腕時計、宝石、自動車やバイクのオーバーホール、垢すりやバキュームカーの清掃にまで手を伸…

キネったな

おはようウルカ。 キネクルという物質がある。 キネクルは特定の金属を含んだ石を特殊な方法で発酵させることによって作られる。 この物質は人間の触覚、素手を通して体内に取り込む事が出来る。 体内に取り込まれと、大脳新皮質の働きを鈍くすることで、感…

こんにちはウルカ。 新幹線に乗っている。 俺は名古屋駅で天むすと味噌カツのおにぎりとプレミアムモルツの小さい方の缶を購入すると、のぞみという名の新幹線に乗った。 それにしても夏休みの新幹線はいつ乗ってもエグい乗車率だな。 なんとか空席に座ると…

コミグロ

おはようウルカ。 クジラという動物が在る。 クジラといえば歯が毛なわけだが、初めて歯が毛だと知った時は衝撃的だったな。 この際生態や進化はよそにおいておく。 一見、身体のどこにも毛が見当たらない生き物だが、口を開けると歯の代わりに毛がワシャワ…

他人の気持ちがわかる全裸カップル

おはようウルカ。 あなたの気持ちがわからないわ。 今では死語となったこのフレーズ。 フィーリング・コピー・アンド・ペースト・メーカー(FCAPM)を生後3週間以内に心に埋め込む施術を義務付けられている現代の人間は、他人の気持ちがわからない気持…

ダークブラウンが短いのかターコイズブルーが長いのか

おはようウルカ。 お前は朝、窓辺で陽の光を浴びるのが日課になったな。 窓を開けた方が良いぞ。 ガラスはお前が必要としている光の成分を遮断してしまう。 生まれて初めての日本の夏はどうだ? 調べてみると、お前たちの一族が暮らす島よりも日本の夏の方が…

アット・ザ・ドライヴイン

おはようウルカ。 カルカッタの安宿でベッドに座っている。 南京虫がうろつくマットレスは、中綿が死にかけていて湿気を吸う体力も残っていない。 明るい青色に塗られた鉄格子型の窓は、歪な長方形をしている。 魔都と呼ばれるこの都市は、巨大なドブ川に逆…

欺く者

こんにちはウルカ。 雲は元々極彩色であったのではないか。 そう思わせるような劇的な曇天が、サーキット場を覆っている。 極限までスピードを求めた構造のレースマシンが、スタート位置に並んでいる。 赤や黄色など、強い原色で塗装された金属の塊は、灰色…

海賊は口笛を吹く

おはようウルカ。 二度寝というものがある。 二度寝というものから幸福を感じとるには、いくつかの条件を満たさなければならない。 ・翌朝気乗りしない絶対参加の会議があること。 ・起床時刻の約一時間半前に自然と目が覚めること。 ・空調、光、騒音など、…

オバチャン草

おはようウルカ。 オバチャン草を育てている。 夏、種を蒔いてから3週間ほどで色とりどりのオバチャンが開花する。 今年は3週間と1日、パープルヘアーのオバチャンが咲いた。 ゾウ型のジョウロで水をかけると、ぶぶぶぶぶぅと唇を震わせて白目になったあ…

冷やした鉄球は大きな葡萄の実にみえる

おはようウルカ。 昨夜未明、無差別に洗車をされるという事件が起きた。 住宅街において車庫や月極駐車場に置かれた自動車を狙った犯行。 カーシャンプーから鉄粉取り、コーティング、足回り、車内清掃まで非常に丁寧に仕上げられている。 一切破損させる事…

祭りの意義とアルダブラ

こんばんはウルカ。 夜。 街灯が頼りない雨上がりの道は、ぬらりと薄くグリーンに光っている。 白髪の老人がフラフラと三輪型の自転車をこいでいる。 今夜、駅前で盆踊り大会がある。 人々は、赤や白を配色した櫓の周りをぐるぐると音頭にあわせて踊り廻る。…

モイストで育てる

おはようウルカ。 ちょうど2週間前に日曜大工(実際には土曜なの)をしている際に軽傷を負った。 軽傷の中ではレベルが高い方の怪我で、軽の上といったところか。 そういえば、怪我をするなんて久しぶりだなぁ。 少年の頃は毎日どこかしらに傷をつくってい…

どうも、幽霊です

こんにちはウルカ。 どうも、幽霊です。 幽霊といいますと、墓場や廃病院、劇場やトンネル、池や柳の木の下周辺での地縛霊、または人間の背後に憑依している死霊や生霊などが一般的な在り方ですね。 元来より、人間の強い想い、怨念や未練、執着などといった…