まじゅつ

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こんばんはウルカ。

 

 

今日は少し遅くなってしまったな。

川崎部長は腕時計をみる。

使えない部下、吉田のミスのせいだ。

おどおどと謝るばかりの吉田の顔を思い出すと、また怒りがこみあげてきた。

気晴らしに一駅歩くか。

川崎部長は普段よりも一つ前の駅で降りると、街灯も疎らな川沿いの道を歩きはじめた。

夜風が気持ち良い。

高架下に、ぽつんと屋台がでている。

この辺りで屋台を見かけるのは初めてのことだ。

こんな場所に屋台をだして集客が見込めるのだろうか。

暖簾にはおでんやラーメンの文字はなく、「まじゅつ」とある。

何だろう。

まじゅつとは珍しいな。

ためしに寄って行くか。

川崎部長は暖簾をくぐる。

ひとり、男の先客があった。

ん?!吉田?

部長、お待ちしておりました。

吉田は焦点の合わない目でヘラヘラと笑った。

 

 

2時間ほど前のこと

 

高架下にぽつんと屋台がでている。

この辺りで屋台を見かけるのは初めてのことだ。

駅から15分ほど歩いた街灯も疎らな寂しげな川沿いの道。

こんな場所に屋台をだして集客が見込めるのだろうか。

暖簾にはおでんやラーメンの文字はなく、「まじゅつ」とある。

同僚に愚痴を聞いてもらいつつ夕食を済ませていた私は腹が減っているわけではなかったので、ラーメンやおでんの屋台であれば素通りしただろう。

まじゅつ屋台。

暖簾ごしに2人ほど客影が見えた安堵感もあり、私は暖簾をくぐった。

いらしゃい。

まじゅつ屋台のおやじは、私が想像した黒いマントのウィザードや鉤鼻の魔人ではなく、白髪で角刈り、赤ら顔のいかにも屋台のおやじといった出で立ちだった。

こんばんは。

安堵と落胆の交じった独特の表情の私は四角いイスに座る。

不思議なことに暖簾ごしに見えた客の姿はなく、カウンターに座っているのは私ひとりだった。

なんにしましょ?

おやじが愛想の良い笑顔をみせる。

柱に貼り付けられたボール紙にメニューらしきものが書かれている。

小まじゅつ  600円

中まじゅつ 800円

大まじゅつ 1200円

瓶ビール 600円

酒 500円

 

ああ、じゃあ瓶ビールお願いします。

はいよ。

 

私は瓶ビールを飲んでいる。

まじゅつを注文すべきか否か。

おやじにまじゅつとは何かを問うべきか否か。

注文するとすれば大中小どのまじゅつにするべきか。

ビール瓶の中身は残り三分の一となった。

 

すみません、あの、まじゅつって...

 

いらしゃい!

こんばんは〜、酒ください。冷やで。

あと、中まじゅつひとつ。あ、白で。

はいよ!

私が口を開くと同時に男の客が一人入ってきた。

常連だろうか、おやじとは親しげである。

はい、おまたせ。

おやじはカウンターに酒の瓶と小さなグラスを置く。

それから大人の握りこぶしほどの大きさの丸い石のようなものをカウンターに置いた。

男の客はその石のようなものに笑いかけたり、話しかけたりしながら酒を飲んでいる。

 

すみません、中まじゅつひとつお願いします。

はいよ。しろ?くろ?

じゃあ、しろで。

私はまじゅつを注文した。

 

しばらくするとおやじは私の目の前に大人の握りこぶしほどの大きさの丸い石を置いた。

どのような仕組みなのかわからないが、目の前の石から漫画の吹き出しのようなポップアップウィンドウが表示された。

 

「貴方が褒めちぎられたい人物を2人選んでください」

とある。

私は酒の勢いもあり、冗談半分にこの国の首相と、今大変人気のある女優の名を口にした。

 

おやじはニコニコと笑っている。

いらしゃい!

こんばんは。

私をはさむように首相と女優が座る。

私は文字通り目を白黒とさせた。

それからどのくらいの時間が経ったのだろうか。

私はありとあらゆる事を首相と女優に褒めちぎられた。

あまりの気分の良さに瓶ビールを2本追加した。

一頻り私を褒めちぎると、それじゃあ、また。

首相と女優は席を立つとあっさりと帰ってしまった。

カウンターにはただの石ころが転がっている。

 

すみません、追加で小まじゅつ、お願いします。

はいよ。しろ?くろ?

えっと、じゃあ、くろで。

私は酒の勢いもあり、まじゅつを追加注文した。

はい、おまたせ!

おやじは私の目の前に子供のこぶしほどの大きさの角張った石をおく。

先ほどと同じようにポップアップウィンドウが出ている。

「貴方の貶し倒したい人物を1人選んでください」

なるほど、これが黒か。

私は迷うことなく川崎部長の名を口にした。

 

おやじはニコニコと笑っている。

いらしゃい!

 

 

 

今日のニュース

プーチン大統領にそっくりなステーキ肉がイギリスのローカルスーパーで発見される

ウルカはデュビアを11匹

逆さまに雨

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おはようウルカ。

 

雨が屋根をたたいている。

そのせわしなく点滅するストロボ光のような音は、前庭器官を酔わせる。

横になったまま、暗い宙を上方向に落ちているような感覚。

この星の物を引きつける力が、磁石の極のように逆さまになって、物を引き離す力に変わったとき、我々は空へ向かって落ちる。

人も家も牛も海もガラスの破片のようにめきめきと地面から抜けて落ちるだろう。

全部の瞼を閉じて、半分の意識は眠っている。

最近はアラームをセットする必要がなくなった。

しばらく人間をやっていると、朝目覚める時間くらいはコントロールできるようになるようだ。

俺はベッドのバネの反動で跳び起きる。

非常に高く跳び起きたので、もう少しで天井に鼻をこすりそうになる。

俺はミルクを温めて飲む想像をするが、この部屋にミルクがない事を思い出した。

ミルクなど何年も買った事がない。

牛の乳を飲むことは牛の舌を食べることと同じくらいに抵抗がある。

結局、牛タンは厚切りより薄切りの方が好みだな。

それよりも案山子のバイトの話をしよう。

作り物の人形を田畑に突っ立てているよりも、実物の人間が突っ立っている方が幾らか効果がマシってものだ。

とんがり帽子をかぶれば時給が30円アップする。

硬いアスファルトの上でモデルルームの看板を持って突っ立っているよりも、ぬかるんだ土の上でとんがり帽子をかぶっている方が幾らか気分がマシってものだ。

この星の物を引きつける力が、磁石の極のように逆さまになって、物を引き離す力に変わったとき、我々は空に向かって落ちる。

とんがり帽子も憤りも憂いも哀しみも恐れもガラスの破片のようにめきめきと世界から抜けて落ちるだろう。

俺はドアを開けて外へ出る。

太陽がカンカンと照りつけては首を焼く。

半分濡れた地面が65キログラムの力で俺を引き止めている。

あと、2キログラム痩せようと考えている俺は、引力が斥力に転じた時、63キログラムの力で地面から解き放たれるだろう。

 

 

今日のニュース

我が子にグーグル(Google)と名付けた夫婦、グーグルからプレゼントをもらうというサプライズ

ウルカはデュビアを8匹

遺伝子に組み込まれたどんぐり

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おはようウルカ。

 

蝉が鳴きはじめたね。

いつからか、ツクツクボウシを見かけ(聞かけ)なくなった。

俺が6歳くらいの頃にはそこそこいたが、それでもレアで、虫取り網をもった子供連中からはクマゼミと人気を二分していたよ。

あの抑揚のある鳴き声は頭について離れないコマーシャルソングのようだ。

よくきいていると、起承転結とも言える展開がある。

余裕たっぷりにじわじわと始まり、力強く情熱的な盛り上がりをみせ、最後にはジーーーーーっとライカのスローシャッターのような哀愁あるサウンドで締めくくる。

どの個体もきちんとチューニングされた鳴き声で、全く同じ曲を奏でる。

遺伝子に組み込まれた旋律。

人間もどんぐりころころあたりが遺伝子に組み込まれていて、悲しい時、威嚇するとき、求愛するときには、思わず歌いだしてしまうようになっていたら分かりやすくて良いかもしれないな。

良くないか…

 

 

今日のニュース

タコベルで購入したナチョスの中からドアノブらしきものが見つかる

ウルカはデュビアを11匹

裏腹系

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おはようウルカ。

 

夏祭りがあるね。

俺は祭りの雰囲気が好きだ。

しかし人混みが苦手だ。

それは海が好きだが、海に入るのはあまり好きではない事と似ている。

それは気持ち良さそうな芝に寝転がると実際はチクジメして不快なのと似ている。

それは分厚いレザージャケットがちっとも温かくないことと似ている。

それは旅行雑誌の写真よりも訪れた現地がしょぼく感じることと似ている。

それは小説の映画化にがっかりすることと似ている。

俺は勝手に放送しておいて、ちゃっかり集金にやってくるNHKをみている。

恐竜超世界Xという番組を行きつけの中華料理店でみている。

この中華料理店はNHKの料金を支払っているのだろか。

 

マツカサトカゲという生き物は爬虫類でありながら卵生ではなく胎生であるらしい。

卵生は数多く産む事ができるが、孵化までに環境変化や外敵により命を落とすリスクが高い。

マツカサトカゲは数多く子供を産まないかわりに、少しでも子供を死なせない繁殖方法を選んだ。

さらにマツカサトカゲは一夫一婦制で、一度ペアを組むと一生そのペアでないと繁殖しないそうだ。

コミカルなルックスとは裏腹に、なかなかシリアスでエモーショナルな生き方なんだな。

 

大将が中華鍋を振るっている。

俺は野菜と豚肉の炒めを奮って注文する。

それは想像よりも何倍も旨かった。

 

 

今日のニュース

トカゲ19匹を旅行カバンに詰め込んで。爬虫類密輸の“闇バイト”で逮捕された27歳OL

近所の公園で未知との遭遇。未確認生命体を目撃、撮影したという男性、逃げている途中に血が噴き出す

ウルカはデュビアを1匹

 

今週のお題「海」

ポケットは行き止まりの構造をしている

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おはようウルカ。

 

良いコインランドリーというものがある。

最近では良いコインランドリーは減った。

良いコインランドリーは一見してわかる。

深夜に水銀燈にぽつんと照らし出されている。

チェリオ自動販売機がある。

アイスクリームと書かれた古いベンチがある。

出入口が引き戸である。

室内照明はLEDではなく蛍光灯で、一本か二本が切れかかっている。

利用客の読み終えた古本が雑然と靴用?のラックに置かれている。

半端にレトロな家庭用の椅子と、どこに売っているのかわからないような柄の椅子に括り付けるタイプの座布団がある。

さらに良い感じに経年変化した爺さんか婆さんがアイスクリームのベンチに座り、肌着姿でタバコに火を付けていたら最高である。

型落ちのドラム式洗濯機の鼓動感と洗剤の匂い。

洗濯物もないのに缶ビールと文庫本を持って出かけたい俺のパワースポット。

文化遺産として残してほしいものだ。

 

今日は束の間の休日。

雨が往生際悪く降っている。

俺はソファに座ってポチポチとこれを書く。

ウルカはとなりで俺のパンツのポケットに入ろうと奮闘している。

ポケットが行き止まりなのがわかったのか、諦めて俺の肩にのる。

ウルカ、随分重くなったな。

爪が痛えよ。

そろそろ初の爪切りをしてみようかな。

シトシトと今日が始まった。

 

 

今日のニュース

自然のエアコン効果。牛フンで車をコーティングすると車内を涼しく保てるというライフハック

ウルカはデュビアを7匹

一人カルマ

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おはようウルカ。

 

ハナゴッソというものがある。

これは名前の通り鼻をごっそり削ぎとるものだ。

ではない。

鼻毛をごっそりいくやつだ。

商品名をハナ毛ゴッソとしなかった気持ちは何となくわかる。

ネーミング会議ではさぞ熱い議論が交わされた事だろう。

机に両手を叩きつけて、ハナ毛ゴッソに反対する熱血若手社員が目に浮かぶようだ。

パッケージにはGOSSOとローマ字で表記されており、何だかフィレンツェの風すら感じる。

 

そんなことはどうでもよい。

オレはハナゴッソを箱から取り出す。

マイクロウェーブに分子レベルで熱せられてどろどろに憤慨したワックスをちっぽけな綿棒のようなプラ棒にチャージする。

意を決して鼻に憤慨ワックスを突っ込む。

ワックスの熱さに少したじろいだが、ここで引くわけにはいかない。

両方の鼻に憤慨ワックスを突っ込むと、息ができないではないか!と一瞬パニックに陥ったが、ここで引くわけにはいかない。

俺は自分に落ち着け、お前は痛みをコントロールできるニュータイプの無痛人だ、優しくて賢い、力持ち、しかもなかなかのイケメンだ、とありったけの自己暗示をあびせる。

そしてワックスが冷めて賢者の石のように固くなるのを虎視眈々と待つ。

 

さあ、時が来たようだ。

ここで引き抜かなければいつ引くというのだ。

物事には引き際というものがある。

白いプラ棒を両鼻からぶら下げたままで豊かな社会生活を送ることがお前にできるのか?

さあ、一気に引き抜くのだ俺。

俺は二本のプラ棒に手をかける。

これを引き抜けば…

鼻毛を1本抜いただけでも涙がちょちょ切れる。

何十本もいっぺんに引き抜いたとしたら何が起こるというのだ。

眠っていた獣が眼を覚ますだろう。

抜かずの刃が輝きを放つだろう。

全身のチャクラが回転をはじめるだろう。

パンドラの箱の口が開くだろう。

黄泉の入り口からノアの箱船が出航するだろう。

ビッグバンを起こした宇宙の真理がライオンズマンションの獅子の口から溢れ出すだろう。

これを引き抜けば。

俺は。

 

お前は痛みをコントロールできるニュータイプの無痛人だ、優しくて賢い、力持ち、しかもなかなかのイケメンだ。

 

眩いばかりの白い光に包まれた俺は、一息に二本のエクスカリバーを引き抜く。

 

遠くで誰かの悲鳴が聞こえた気がした。

 

 

 

 

 

ところで、手を洗うために泡ハンドソープの入れ物(ポンプ式)の前に左手を差し出す、右手でポンプの頭を押す。

すると差し出した左手が近すぎて、ポンプの首の部分で左手を挟んでイテっとなる。

加害者も被害者も俺という一人カルマ。

これが地味に痛い。

そして悔しい。

 

さあ、仕事、やっちゃうぞ!

それゆけ俺。

 

 

今日のニュース

負傷したカメの治療にブラホックが役に立つ。動物保護団体が使用済みブラジャーのホックの寄付を呼び掛ける

村田、王座奪回 TKOでブラント撃破 WBAミドル級

ウルカは肉食爬虫類用フードを一欠片

オツカレサマオヤスミマタアシタ

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おはようウルカ。

 

恐怖症というものがある。 

高所恐怖症

閉所恐怖症

動物恐怖症

海洋恐怖症

対人恐怖症

血液恐怖症

広場恐怖症

風船恐怖症

集合恐怖症

挙げはじめるとキリがないほどの恐怖症が存在する。

私は恐怖症専門の臨床心理士として働いている。

本日はまた新たな症例として、対AI恐怖症患者を診察した。

人間については全く問題ないのだが、対AIとなると途端にパニックに陥るそうだ。

AIに全てを分析され、心の奥底まで見透かされているような心的不安が要因となっているようだ。

飛躍的にAI技術が発達した現代、自動車やドライヤー、スプーンなどの食器に至るまで、殆どの人工物にAIが組み込まれており、AIを避けて生活する事は困難な状況となっている。

今回の症例は、今後爆発的に増加する事が予想される。

まさしく現代病と言ってよいだろう。

私はひととおり診察を終えると、AI恐怖症患者にたいして、難しい症状ではあるが時間をかけてゆっくりと対処していきましょうと告げた。

優しそうな婦人に抱えられた患者、アンティークなデザインの人工知能付きティーポットは、不安そうにヨロシクオネガイシマスと言った。

 

ナースが診療時間の終了を告げる。

私は本日診察した対AI恐怖症患者についての論文が途中書きなのでもう少し働きたいと言ったが、ナースは譲らなかった。

ナースは私のシャットダウンボタンを押すと、お疲れ様でした先生。と部屋の照明を消し、ドアに鍵をかけて帰っていった。

私は薄れる意識のなかで、オツカレサマオヤスミマタアシタと言った。

 

 

 

今日のニュース

ナイアガラの滝で流された男性、生存を確認

ダンスのフォームを生み出すのは人間だけではない。14種のダンスを覚えたオウム

ウルカはデュビアを1匹

 

スクラッチ・エンジェル

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おはようウルカ。

 

博士は研究に研究を重ねた。

人類はマッサージチェアーを発明した。

しかしまだやり残したことがある。

そう、スクラッチチェアーである。

人は身体のコリをほぐしたい欲求と同じくらいに、背中を掻いてもらいたい。

そう、背中が痒いねん。

孫の手などという商品があるが、あれでは本来の欲求を満たす事には到底届かない。

そう、孫の手では届かないのである。

先ず、他者に掻いてもらうという所が大切なポイントとなる。

自分で痒い所を掻くのでは、全く面白みも幸福感も得られない。

これは痒い部分を一切把握していない他者が当てずっぽうに掻き、それが偶然にもKスポット、要するに痒いスポットにヒットした時の高揚感と幸福感、そしてKスポットに程よいシャープネスの爪を有した力強くも優しい手が少しずつ近づいてくる期待にうち震える感覚こそが醍醐味なのである。

手の大きさも大切な要素となる。

大き過ぎても小さ過ぎてもいけない。

この世界は、程よいシャープネスの爪を有した力強くも優しく程よいサイズの手を持つ愛に溢れる家族や恋人を持つラッキー野郎ばかりではない。

シングルアパートで孤独に背中を痒がっている者、家族に全く相手にされずリビングのソファーベッドで眠る者、SADを患い他人と接する事が困難な者、背毛の量が尋常ではなく恥ずかしくてTシャツを脱げない者。

様々な事情が生きている人間の数だけあることだろう。

博士は研究に研究を重ねた。

マッサージチェアーを応用して製作したスクラッチチェアーは申し分ない掻かれ心地を提供する事が出来たのだが、何か物足りない。

そう、大切なのはSP(スクラッチ・ポジション)、要するに掻きを提供される時の体勢である。

それはいにしえの頃より、うつ伏せと決まっている。

こうなると座る事を前提としたチェアーでは役不足だ。

リクライニングしたところでなんの意味もない。

ベッドや布団、畳などにうつ伏せとなった状態の被掻者に対して掻きを提供できるもの。

そう、SR(スクラッチ・ルーフ)、またはSC(スクラッチ・シーリング)、要するに天井から手が伸びてきて掻きを提供する機構を持つ天使。

博士は商品にスクラッチ・エンジェルと名付けた。

クラッチ・エンジェルの設置には家をぶっ壊す程の大掛かりな工事が必要となる。

 

クラッチ・エンジェルⅡ

258万円(工事費・消費税別)

 

注文は、未だない。

 

 

今日のニュース

医師が臨終宣言。だが本当は死んでいなかった。生きたまま埋葬されそうになった男性

老人施設で100歳の男性と102歳の女性が恋に落ちて結婚。挙式を上げる

ウルカはデュビアを1匹

無音が騒がしくて眠れない

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おはようウルカ。

 

ケンジはストリートミュージシャンだった。

アコースティックギターを肩にぶらさげて、気に入った場所を見つけると立ち止まって歌う。

街路樹の下で。

溝川の土手で。

裏路地のゴミ捨て場で。

公園の砂場とジャングルジムの間で。

 

左手でギターのネックを掴んで右手は草叢の上

スチロールの髪が振動をコップに注いだとき

老人は無造作に濃度を並べる

粉末の答えは虹をまつ

答えの粉末は軌道に直結する

ストローの髪が言動を月に注いだとき

人狼はページをめくる手をとめる

ピックアップの無いギターは無人の澤

無音が騒がしくて眠れない

無音が切迫してベッドに人型がつく

左手でギターのネックを掴んで右手は草叢の上

ヘッドレストに跨った靴下が野草の誕生を祝うとき

肖像は無邪気に差別を重ねる

温風の問いは雨をまつ

問いの温風は空洞に直結する

パンプスの心臓が衝動をコップに注いだとき

盲人は風穴を追う事をやめる

ピックアップの無いギターは無人の澤

無音が騒がしくて眠れない

無音が切迫してベッドに人型がつく

 

メロディも正確な発音もない。

新品に交換されたアコースティックギターの弦は調弦されていない。

ケンジは生れつきろう者だったから、音楽も自分の声も聴いた事が無かった。

それなのにケンジは音楽が好きだった。

ケンジは歌を書いたノートをよく見せてくれた。

よく晴れたその日も、俺が手話を話せないからメモ帳チャットで色々と話した。

翌日、ケンジが父親のスクーターを運転して事故を起こして死んだと聞いた。

葬式ではケンジの母親が白い顔をして泣いていた。

俺はケンジが牛丼特盛を二杯連続で注文するくらい精一杯生きていたのを知っていたから、あいつに後悔はないと思った。

 

 

今日のニュース

インドの牛密売人の男 輸送中に盗んだ牛に股間を蹴り上げられ死亡

五輪競泳メダリスト、溺れた新婚男性救う

ウルカは休食

 

今週のお題「わたしの好きな歌」

 

真っ白い真っ新なベテラン

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おはようウルカ。

 

渋谷の宿で目覚める。

薄いカーテンを幾重にも重ねたような朝は鮮明な今日になるまでもう少し時間がかかりそうだ。

 

ブログのアプリのアイコンにタッチする。

記事を書くというボタンに触ると、真っ白い真っ新な画面が表示される。

ここには何を書いたって良い。

写真や動画や絵をリンクしたって良いし、白紙で投稿したって別に構わない。

プチプチと白い液晶画面に黒い文字の穴を開けていく。

 

今初めて気がついたのだけれど、画面中央より少し下あたりに現在の文字数が表示されるのだな。

ここまでで240文字。

なんとまあ面白い。

自分の書いた文字数をリアルタイムで知らされるのは、積み上げてきた何かを数値化されているようで気分が良いな。

何かしらの経験や努力や実力もこうやってリアルタイムに数値で知らせてくれたらモチベーションが上がるのに。

ほらもう350文字を超えたぜ。

 

俺はこの真っ白い真っ新に、毎日好き勝手書き散らしている。

もっとはみ出しても良いのかなとも思うが、はみ出す事を意図した時点でシラけてしまいそうだよな。

 

それにしても、俺が生きている世界は真っ白い真っ新がとても少ない。

海も山も道もステーキもビルも商店も人も動物も火も空も森も風も雨もプリンも俺よりも随分前から存在していて、今更何ですか?という面持ちで鎮座している。

存在の大ベテランである。

 

いやまてよ、そうか。

今初めて気がついたのだけれど、真っ白い真っ新は俺の中で何度でもつくれるじゃないか。

自分が真っ白い真っ新なつもりになればそれだけで良いんだ。

なんとまあ面白い。

今度気が向いたら海にも山にも道にもステーキにもビルにも商店にも人にも動物にも火にも空にも森にも風にも雨にもプリンにも、真っ白い真っ新な俺で対峙してみよう。

そうすれば、海も山も道もステーキもビルも商店も人も動物も火も空も森も風も雨もプリンすらも、俺にとっては真っ白い真っ新となることだろう。

 

渋谷の宿で目覚める。

薄いカーテンを幾重にも重ねたような朝は鮮明な今日になるまでもう少し時間がかかりそうだ。

 

ブログのアプリのアイコンにタッチする。

記事を書くというボタンに触る。

真っ白い真っ新な画面が表示された。

真っ白い真っ新なつもりの俺は、先ず、おはようウルカと書いた。

 

 

ところで、コンタクトより、めっちゃ良い文章だね。とコメントくださった奴、めっちゃ良い事言うやん。

ありがとうござます。

お陰で少し寝つきが悪かっです。

今日は誰かが喜ぶ事を2回以上言おうと思います。

正の連鎖Ⅱです。

 

 

今日のニュース

フィンランドで世界「妻担ぎ」レース、リトアニア人夫婦が連覇

ウルカは鶏ムネ肉を7切れ

青紫色の朝

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おはようウルカ。

 

暁美さんは603号室に住んでいる。

オルガンみたいなイメージの服をきている。

低温火傷のような色のスカートは引き摺るほど長くて、ベロアとフェルトの中間のような素材は重厚な光沢がある。

エレベーターですれ違うといつも僅かにガソリンの匂いがした。

執念深くブリーチした髪は真っ白で、太く三つ編みにした束を首にぐるぐると巻きつけている。

長くて頑丈そうなヒールのついたブーツは足を踏み出す度にドシャリドシャリとコンクリートの床を削るように蹴るので、近所の婦人たちは顔を曇らせた。

左手の髑髏のネイルはシルバーを一度溶かしてまた固めたもので、タバコや焚き火の煙で燻されている。

暁美さんは肋骨が折れている。

肋骨にはギブスを巻くことができないので、傍目には何事も無かったように肋骨が折れている。

暁美さんは自分を陸ガメの生まれ変わりだと信じていて、次はイヌワシやオオカミに生まれ変わるのだと毎年のカレンダーに書きとめている。

そんな暁美さんの愉しみはというと、夜明けの空に向かってまっすぐな道を全力疾走すること。

このマンションの前には東に向かって300メートル以上続く真っ直ぐな道がある。

視界を遮る大きな建物などはなく、鉄塔がぽつりぽつりと生えているばかりだ。

空と街が青紫色になるような朝には、ドガジャラドガジャラと暁美さんがアスファルトを蹴る音がきこえる。

近所の犬はつながれた杭の周りをくるくると吠えながら暁美さんを見おくる。

いつの朝だったか、走り終えた暁美さんとエレベーターで一緒になった。

「暁美さん、おはようございます、綺麗な朝ですね。」

「そうね、青紫色の朝は好きよ。それ以外の朝はすごく嫌い。私ね、本当はエミリーっていうの、これからウォッカを飲んだらぐっすりと眠るわ。」

エミリーはドアをバタンと閉めるとそれっきり静かになった。

 

 

今日のニュース

ドローン撮影をしていた父親、子供たちの背後にサメを発見

ウルカはデュビアを2匹

相席食堂

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おはようウルカ。

 

いらっしゃいませぇ

お好きな席へどうぞ

暖簾をくぐると昔ながらの雰囲気の良い店内と料理の良い匂いにホッとする。

品の良い初老の夫婦がきりもりしており、何を食べても旨い。

昼時になると行列が出来るほどだ。

カウンターや4人がけのテーブル席は一切無く、向かい合って座るタイプの2人がけのテーブル席がずらりと並んでいる。

 

 

相席食堂。

ルールがある。

独りで入店しなければならない。

相席しなければならない。

アプリの相席食堂ギャラクシーⅡで自分の育てたアバターと相席相手のアバターとで対戦し、勝利しなければ好きなメニューを注文することができない。

対戦に敗れると、対戦相手、要するに相席相手と同じものを注文しなければならない。

ゴリゴリ戦闘DAYというものが月に3度あり、敗者は勝者と同じものを注文する事に加えて、料金を2人分支払わなければならない。要するに奢らなければならない。

食事の料金はアプリに課金する方式である為、現金を持ち歩く必要はない。

アバターはアプリ上で自分と同じものを食べ、成長する。

カツ丼ばかり食べていると太るので注意が必要だ。

勿論ジョギングやムエタイジム、SMクラブなどでトレーニングした場合は、それらもアバターに反映される。

 

今日はゴリゴリ戦闘DAY。

俺は相席待ちのテーブルを探す。

オドオドと汗を拭きながらスマートフォンをいじっているショボくれたサラリーマンに目をつけた。

これは楽勝だな。

俺はショボくれサラリーマンの向かいに座る。

余裕たっぷりに笑顔で軽く会釈すると、スマートフォンを取り出し、相席食堂ギャラクシーⅡを立ち上げる。

備えつけのVRヘッドマウントディスプレイを装着すると、高揚感のある起動音とともに俺はアプリの世界に入る。

対峙したショボくれサラリーマンのアバターはやっぱりショボくれていた。

ヨレヨレの背広を着て、眼鏡は脂でニラニラと汚れている。

俺のアバターは先月から通っているジムの戦利品である上腕二頭筋を見せつける。

対戦競技を決める為、ランダムボタンを押す。

スロットが回転し、絶叫マシン我慢くらべとでた。

先に声を出した方が負けとなる。

楽勝だな。

 

ウヒィピっ

俺は開始6秒で自分でも初めてきく悲鳴音をあげて撃沈した。

俺は恐縮しながら汗を拭くサラリーマンアバターにデラックスミックスフライ定食バニラアイス付きをご馳走すると、ショボくれながら相席食堂を後にする。

ありがとうございましたぁ

またおねがいします

品の良い大将アバターの声が背後で響く。

デラックスミックスフライ定食バニラアイス付き。とても美味しかった。

また来よう。

次は負けないぜ!

満腹になった俺アバターはコンクリートジャンゴーへ飛び込んでいった。

俺はVRヘッドマウントディスプレイを外す。

目の前にはデラックスミックスフライ定食バニラアイス付きが輝きを放っている。

俺は相席の元ショボくれサラリーマンと健闘を讃えあうと、手を合わせる。

いただきます!

 

 

今日のニュース

またしてもタコの凄さが露呈。8本の触手は脳からの指令がなくても独立して意思決定ができる(米研究)
ウルカは休食

忘れてしまわないようにここに書いておこう

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こんにちはウルカ。

 

サハラ砂漠を死にかけのラクダと横断した。

パンを砂に埋めて焼く料理はクソ不味い。

プノンペンで銃を横腹につきつけられた。

カルカッタで夜中の3時にデカいナイフを持った奴が部屋に侵入してきた。

バングラデシュ武装勢力に拘束された。

ロスで若いギャングと友達になったらそれは最弱グループで毎晩他のグループに追いかけ回された。

有楽町で朝まで飲んだら一文無しになって靴擦れと戦いながら8駅歩いた。

何か行動をおこすと必ずリスクもある。

それでも気になる事はやり尽くした方が良い。

若い時間はすぐに過にぎる。

歳食ったらチョボチョボとしか吸収出来なくなる。

学校や職場や家族がどうのこうのと言っている場合ではない。

経験は想像に勝る。

経験して、さらに想像しろ。

俺。

既にあまり若くはないが。

まだまだいけるだろう。たぶん。

 

 

ところでウルカ、俺は最近オオトカゲと暮らしているよ。

デュビアというエグい奴等にも随分慣れた。

お前は最近人間と暮らしているらしいな。

調子はどうだい。

 

今日は久しぶりの休みだ。

何をしちゃろうか。

 

 

今日のニュース

売り物のアイスを舐めて冷凍庫に戻した女性に20年の懲役

ウルカは休食

棒読みサマーブーツ

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おはようウルカ。

 

新宿でおりる。

瓦礫の山に色とりどりのLEDライトを仕込んだような街だね。

俺はビールを注文する。

棒読みみたいな人間が棒読みみたいな話題で盛り上がっている。

俺はイヤフォンで中村のドラムを聞いた。

ハイハットが繊細で乱暴で心地よい。

これを打ち込むとなると至難だな。

 

恵比寿あたりでMAXMSPで乱数を乱立した装置を作る。

即興で棒読みのグルーヴを知ったかぶりで出力する。

ヘベレケの客には分かりゃしない。

嘔吐と歓喜

俺は冷めている。

オウテカあたりも冷めてプレイしているのかな。

いやいや、彼等は覚めてプレイしているのだろうよ。

暗闇が煙たい。

聴こえない低周波は内臓を壊そうとする。

ヘベレケの客には分かりゃしない。

俺はモニターにしていたヘッドフォンを外すと、音圧とシンクロする。

さあ、やってみろよ。

俺に何ができる?

 

 

スウィッチ。

 

 

平山ちゃん、この時季にそのブーツは流石に暑苦しいだろ。

悪かったな、でもそのニット帽もこの時季においてはなかなかの不快アイテムだと思うぜ。

ハハハ、これはね、サマーニット帽なのだよ。

ほら、サマーセーターとかあるじゃん。

これはね、それの兄弟分なのよ。

だからこれは正当なサマーアイテムなの。

平山ちゃんのそのブーツは不当サマーアイテムなの。

ぐぬぬ

 

 

スウィッチ。

 

 

列車遅れましてご迷惑をおかけいたします。

次に参ります列車はホットヨガ車両となっております。

お乗り間違えのないようお願いいたします。

なお、冷し中華ぶっかけ列車は大雨の影響により本日運休となっております。

お急ぎのところ列車遅れまして大変ご迷惑をおかけいたします。

まもなく列車が参ります。

大変危険ですのでホーム黄色い大蛇の内側でお待ちください。

新宿〜新宿〜。

 

 

今日のニュース

テレパシーでゲームプレイ。頭で考えるだけでプレイヤーと協力し合いブロックを消す脳内テトリス(米研究)

ウルカは鶏ムネ肉を10切れ

ニホンオオカミのレプリカ

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おはようウルカ。

 

のらりくらりと降る雨が森を乳白色に暈している。

ワックスを擦り込んだエジプト綿のジャケットはよく撥水した。

大きなフードは世界と自分を隔てる最後の砦、最後のバリア、最後の殻。

森にはいって3日が経った。

喉の奥が痛いような、痒いような、嫌な感覚は酷くなってきている。

 

森はぽっかりと空いた穴のように都市の真ん中にあった。

人工的に作られたもので、徒歩で横断すると3週間程かかる。

野生タイプの動物が数多く生息しており、ニホンオオカミなど、既に絶滅した種のレプリカを見る事もできる。

政府が世界中のあらゆる学者を集めて開発した人体メンテナンススペース。

税金、保険料を納めている者であれば自由に利用する事ができる。

両手両足に巻いたセンサーが身体、精神の状況をネットワークサーバへ送り、AIがそれらを最適化する為の行動、ルートを其其のタブレット端末へ指示として送る。

指定された植物を食べ、書物をタブレットで読み、同じルートを11日間グルグルとまわる者もいれば、火を起こし、木に登り、腹式呼吸を決められた時間繰り返し、狩をしながら数ヶ月間森に留まる者もいる。

森で他の人間に会うことは無い。

AIの指示通りに行動していれば、身体と精神は最適化され、人間社会へ復帰する頃には最高のパフォーマンスを発揮する事ができる状態となっている。

 

メンテナンス改革。

高い生産性を維持するには、労働する者のメンテナンスが重要となる。

効率よく高いパフォーマンスを維持する為の法案。

執行されてから6年が経つ。

この国の生産性、幸福度、犯罪減少率は世界でトップを争うまでとなった。

 

 

その大きなフードを深く被った者はホームレスのように貧しい身なりをしている。

背が低く、痩せている。

手足に付けているはずのセンサーもなければ、タブレット端末も持っていない。

セキュリティをかい潜って森に入ってきたようだ。

 

木々にフレーミングされた細かな雨を落とす空を見上げる。

大きなフードから顔がのぞいた。

10代前半だろうか、少年だった。

透き通るような白い肌に目鼻立ちのはっきりとした顔は美しいと言って良い。

 

少し離れた場所で、この貧しくて美しい少年を観察する者が在る。

AIを搭載したニホンオオカミのレプリカは気配を完全に消し、排除するよう命じられた侵入者を観察している。

スキャンした結果、この貧しくて美しい少年は気管に癌疾患があるようだ。

治療しなければ癌は身体中に広がり、正常な細胞を喰い尽くし、少年は死ぬだろう。

 

少年の後をつけて3日が経った。

ニホンオオカミのレプリカは不思議な感覚に戸惑っていた。

少年を排除せよと命じられているが、実行に移せないでいる。

プログラムにブレーキをかけるウィルスか何かが人工脳内で増殖しているようだ。

原因は不明であり、システムユーティリティの修復を試みたが改善はみられなかった。

 

ニホンオオカミのレプリカは少年を美しいと感じた。

美しいという言葉は知っているが、美しいと感じたのは初めてのことだ。

思考する事はできても、美しさに感動するなどという不要な感覚は設定されていない筈である。

ニホンオオカミのレプリカは川の水を掬って飲む少年の美しさにその灰色の目を細めた。

 

 

神頭先生、経過はどうですか?

ああ、小林教授、大変良好です。

あのレプリカオオカミのプロトタイプですが、感情や自我の形成は想定以上に早く、現在ではあの少年に寄り添い、癌疾患の治療プログラムを実行しております。

それにしても教授、あの様に都合のよい少年をよく見つけて来られましたね。

万が一レプリカオオカミが暴走して喰い殺してしまっても身元不明で処理できそうです。

ホームレスとは良いところに目をつけましたね。

ん?神頭君、私はあの少年については何も知らんぞ。

君が用意したのではなかったのかね?

いえいえ、私も知りません。私は教授がご用意下さったとばかり思っておりました。

んんん、だとするとあの少年はいったい何者なんだ・・

 

少年はニホンオオカミの首を撫でている。

のらりくらりと降る雨が森を乳白色に暈している。

ワックスを擦り込んだエジプト綿のジャケットはよく撥水した。

ジャケットから取り外した大きなフードをニホンオオカミの背に着せる。

それから少年は自分の股関節にカムフラージュされている自国との通信機器のスイッチを切った。

 

 

今日のニュース

27分間の死。心停止から6回の蘇生を経て生き返った女性、意識が戻った直後に奇妙なメモ書き

ウルカはデュビアを7匹