2019-09-01から1ヶ月間の記事一覧

ずっと下り坂プロジェクト

こんにちはウルカ。 自転車に乗った学生が、太陽の光と風と排ガスを浴びながら、立ちこぎで坂を登っている。 高校生だろうか、激流に逆らう鮭のように生命力が滾っている。 俺は反対に川下へ車道をくだっている。 アクセルから足を離して、重力にまかせる。 …

エレキギターと同じ大きさの穴

こんにちはウルカ。 湯呑みの茶が湯気を立てている。 テレビが不健康な光をばらまいている。 黄ばんだレースのカーテンが、青白い外光を透かしてシアン色に歪んでいる。 月に一度、田舎から届く段ボール箱は、封を開けられずに玄関の隅に積まれている。 段ボ…

タフなババア

こんにちはウルカ。 近所に、一軒家ふたつ分くらいの空き地があって、土が見えないほど色々な種類の雑草が茂っている。 中にはクワ、ヤブガラシ、オオバコなど、草食爬虫類飼いの間では宝物と言われている野草の姿もチラホラ。 これらの野草は、人間が食用と…

ウェアラブル型の飛行昆虫

こんにちはウルカ。 鏡のような銀色のタンクのトラックが、歪めた世界を反射してみせている。 中央分離帯に捨てられた左足用のスニーカーは、草原に放置された廃バスのようだね。 あと3週間ほど、自動車で通勤する事になりそうだ。 運転は楽しい。 マニュア…

月のない夜はコーラの瓶を

こんにちはウルカ。 月のない夜は、雲と空が反転してみえる事があるよ。 雨雲が空よりも黒いから。 そう言ってルクは、路上にある段差に座り、コーラの瓶にいれた井戸の水を飲んだ。 ルクは孤児で、正確な自分の年齢を知らない。 外見から、おそらく13才く…

解放厳禁

こんにちはウルカ。 昼から夜にスライドがはじまるころ。 オートバイで湾岸道路をはしっている。 ドルドルとエンジンが振動して、丈夫なゴム製のタイヤがアスファルトを蹴る。 空を映した青赤色の海面が遠くにみえる。 月曜から3日目の今日はよく晴れた。 …

ナビゲーション・バー・オリジン

おはようウルカ。 ナビゲーション・バー・オリジンは、駅から歩いて5分ほどの高架下にある。 私は常連という程ではないが、数ヶ月に一度のペースで訪れている。 雨が、降ることをやめた。 チラチラと街の灯りがともり始め、ゆきすぎる列車の四角い窓が、黄…

終わらないでくれ

こんにちはウルカ。 暖かいビーフカレーライスを食べた。 昭和の時代に一斉を風靡したであろう、日本の味。 オーガニックな多種類のスパイスの香りなど皆無だ。 しかし、コクと旨味はたっぷりで、日本の米に良くあう。 このときよ、終わらないでくれと思わせ…

持ち物が持つ者

こんばんはウルカ。 もう、じゅうじか。 うかうかしていると明日が始まっちまうな。 明日が始まってしまうまえに、持ち物が持つ者の話をしておこう。 硝子を運ぶ錆びたトラックが、慎重に振動している。 歩道では、アルペジオ専門のギターリストが、奏でては…

アルダブラ入室

ただいまウルカ。 今日は名古屋で開催されたレプタイルズ・ワールドに行ってきたよ。 そして、連れ帰ったよアルダブラ。 セーシェル生まれ。 手のひらサイズ。 最終的なサイズはデカめの岩くらい。 寿命は俺の3倍くらい。 こりゃあ、沖縄あたりに移住して庭…

私はヤクザの腹に刃物を突き刺した

こんにちはウルカ。 オレはなあ、運動神経がグンバツだったから、ケンカも得意だったんだよ。 相手の拳や蹴りはよく見えたし、相手に拳や蹴りをあてるのは簡単だったぜ。 なにせ、運動神経がグンバツだったからなあ! 大人になるにつれて、拳が刃物になり、…

ポロポロと善を流しました

こんにちはウルカ。 さあ、わたくし、 慈善だの偽善だのと、善を生業としております。 善を金や食料や寝床に変える事は善なのか否か。 ここで禅問答を繰り広げるつもりは毛頭ございませんが、善を贈れば、七、八割方、善でかえってまいります。 それは感謝の…

乱暴なハッピー

こんにちはウルカ。 車椅子の男は、道路を横断している。 歩行者横断用の白いラインはない。 自分は歩行者ではない。 ほら、車輪がくっついているだろう。 と、よく言っている。 クソ暑いのに、オリーブグリーンのコートを着ている。 顔の変な位置にピアスと…

非常用装置リモコン付き

おはようウルカ。 思考言語変換障害が発生している。 頭に浮かんだイメージを言葉に変換する間が、次第に長くなる。 重い霧のような白い不透明が遮る。 俺はそれが嫌いではないが、何かと不便だよな。 言葉に変換できないとなると、絵に描くか、音や動きで表…

みっちゃん

こんにちはウルカ。 話が途中だったな。 駅前の居酒屋。 ふと、店内の音楽が途切れる。 俺たちのすぐ後ろで、音がした。 ギィ、ギィギィ、ギィ、ギィギィ 振り返ると、女が、隣に座る同僚のタケに今にも触れそうなくらい顔を寄せて、剥き出した歯を軋ませて…

ギィ、ギィ、ギィギィ

こんにちはウルカ。 私は、「ポン酢にしばらく浮気していたけど、やっぱり醤油が最高ってことに気がついた」ってツイートした後、「変な女に尾けられてる、こわい」ってツイートした。 異様に首のまがった女が、追ってくる。 長く伸ばした前髪で顔ははっきり…

ウルカって誰ですか?

こんにちはウルカ。 ウルカって誰ですか? という質問をちょいちょいいただいているので、ここでお答えします。 ウルカとは、一緒に暮らしているトカゲの名前です。 と言っても、本当の名前ではありませんが… ちなみに平山もタンバリンも俺にはなんの所縁も…

森が膨張したようだ

おはようウルカ。 動物は隠れる事が好きだよな。 好きというよりも、酸素や水と同じ様に生きる上で必要な要素なのだろう。 隠れる事によって、雨、雪、雹、風、陽光、寒さ、暑さ、外敵、から身を守る。 更に人間はプライバシーや財産や1人の時間を守るため…

45分あれば

こんにちはウルカ。 自動車を運転している。 中央分離帯の雑草が風に揺れている。 よく晴れた空は道路標識よりも薄い青色で、鱗雲がじんわりと浮いている。 邪魔者のない道は、どこまでも続く滑走路のようだ。 朝の混み合う時間帯から45分遅くらせるだけで…

僕は痴漢

おはようウルカ。 僕は痴漢。 見知らぬ女性のお尻を触ると嬉しくなる。 痴漢チケットはインターネットで購入するよ。 駅に着くとスマートフォンに整理番号が表示される。 僕の整理番号は136番。 順番はきちんと守らなきゃ。 順番を守らない人は、ニッポン…

アンフェアな勿論

こんにちはウルカ。 ハンドル部分を作っている。 革やプラスチック、樹脂、金属、石、植物繊維、化学繊維。 様々な素材のハンドル部分がある。 私はハンドル部分、つまり手で持つ部分を作る職人だ。 鞄、手すり、列車の座席の耳、自動車、オートバイ、吊革、…

解答となる私

こんにちはウルカ。 次の解答から問いを作成してください。 ・3 ・ヒトイキレ ・摩擦 ・Angular ・正子は青を選ぶ ・真鯛 ・36.529 ・檸檬または煙草 ・シルバーのライン ・石 ・C9H13NO3 解答だけが羅列された試験用紙。 私は採用筆記試験を受けている。 残…

パプリカを囓る忍者

ただいまウルカ。 今日は暑かったね。 夜は台風がやってくるそうだ。 嵐になる前に、家族の話でもしようか。 夏が盛りを終える頃。 パンク・ロック・ファッションに身を包んだ老女が、手押し車に凭れるように歩いている。 ぶつぶつと何かを呟いているが、行…

自書像

こんにちはウルカ。 自書像を書いてみよう。 この時季の朝靄は湿気が重い。 歩行速度が速い。 小さなカメラを右手に持っている。 髪を出鱈目に刈り上げている。 3日前にぶっ壊れたアップル・ウォッチを廃品アクセサリーとしてリサイクルしている。 ピアスの…

小分けアタラクシア

こんにちはウルカ。 亀田さんよ、カレーせんは小分けにしてくれよな、いっぺんに一袋いってまうだろ、ハッピーターンでできて何故カレーせんで出来ない? たのむでしかし。 それはさておき、小分けというものは素晴らしいよな。 最近、内容量135mlという…

66.843KHzは幸せか

ゴドロゴドロと大きくて重たいものを引き摺るような音で空が鳴っている。 外は悪天候のようだ。 この部屋は暖かい。 気温68度。 湿度12パーセント。 僕たちが快適に過ごせるように調整されている。 人間のオスを飼っている。 ケージのある部屋に入る時は…

極悪がベースの微笑

こんにちはウルカ。 三丁目に感情ショップが開店したね。 天然感情と養殖感情では、やはり天然物の方が高価なようだ。 パーマの天然物は大して重宝されないのにな。 テイクアウトで「愉快」と「恍惚」と「平穏」を買っていこう。 本当は店内の高級なソファに…

自在な俺

こんにちはウルカ。 街鳥が雲に埋まるように飛んでいる。 自動車や室外機から吐き出される排気体が、膝の高さでわだかまっている。 商店街のくじ引きで一等が当たった。 景品は石っころ1つ。 宝石の原石だそうで、時価5億円だと八百屋のおっちゃんが言った…

明るい奴隷

こんにちはウルカ。 鐘と鈴のちょうど中間のくらいの音が、機械的ではない等間隔で鳴っている。 作業の終了を告げているのだ。 僕は奴隷。 今日も奴隷仲間達と笑い合い、大きな岩を沢山運んだ。 足首には人間の頭蓋ほどの大きさの鉄球が鎖で繋がれており、走…

テクノロジーに変顔

おはようウルカ。 俺の住んでいる町にはまだ、野草が生えるくらいの余地がある。 通りを歩いていると、あちらこちらに野草が勝手に生えている。 俺はタンポポですら、花が咲いていなければ見分ける事が出来ない、野草しらずだ。 野草に詳しい人は凄いね。 野…