沖本さん

f:id:maxm:20191008083720j:image

おはようウルカ。

 

やれたスーツにボロボロのセイコーを左手にまいた40代が、満員電車で歯を食いしばっている。

今月の営業成績順位は、下から数えた方が早かった。

若い奴のような体力も話題も、ない。

ペコペコしたシタテな態度は、取引先にナメられるだけだ。

もう、そんな時代じゃないんだ。

なんでこんな事をしているのだろうという疑問を燃えないゴミにだしてから、15年が過ぎた。

いっそ燃やしてもらえばよかったのかな。

いつからか、嫁は石像のように無表情になった。

娘は、アトピーとイジメに苦しんでいる。

安アパートと穴の空いたコンバースが恥ずかしくて、同窓会へ出席したことはない。

それでもね、小説を書いている。

会社と自宅を往復する2時間半、満員電車の中、歯を食いしばって。

学生時代、文芸誌の投稿で入選したことがある。

 

沖本さんとは、しみったれた駅前の居酒屋のカウンターで出会った。

俺は、出鱈目な路線で的外れな駅で降りるという行動をする事がある。

知らない街の、しみったれた居酒屋へいけるからね。

スーツのサイズ感が、昭和っぽくも今っぽくもある。

セイコーの腕時計は就職した時に自分に祝いとして買ったそうだ。

沖本さんは、見ず知らずの俺に色々と話をしてくれた。

見ず知らずの話し相手を探していたのかもしれない。

「もう、そんな時代じゃないんだよ、でもね、僕は僕の時代を忘れずに、もう少しやってみるよ」

そう言うと沖本さんは、レモンサワーを飲みほした。

 

 

 

今日のニュース

アリに敬意を抱いていたアメリカ先住民、ホピ族が信仰するアントピープル

1人暮らしの女性は気を付けてほしい、玄関にある覗き穴に潜む危険

中国で業者に洗濯機を売り払った男性 隠していた金塊にあとで気付く

米で「飲酒運転を見た」と警察に通報した女 自身が飲酒運転で逮捕

ウルカはデュビアを16匹