一人カルマ
おはようウルカ。
ハナゴッソというものがある。
これは名前の通り鼻をごっそり削ぎとるものだ。
ではない。
鼻毛をごっそりいくやつだ。
商品名をハナ毛ゴッソとしなかった気持ちは何となくわかる。
ネーミング会議ではさぞ熱い議論が交わされた事だろう。
机に両手を叩きつけて、ハナ毛ゴッソに反対する熱血若手社員が目に浮かぶようだ。
パッケージにはGOSSOとローマ字で表記されており、何だかフィレンツェの風すら感じる。
そんなことはどうでもよい。
オレはハナゴッソを箱から取り出す。
マイクロウェーブに分子レベルで熱せられてどろどろに憤慨したワックスをちっぽけな綿棒のようなプラ棒にチャージする。
意を決して鼻に憤慨ワックスを突っ込む。
ワックスの熱さに少したじろいだが、ここで引くわけにはいかない。
両方の鼻に憤慨ワックスを突っ込むと、息ができないではないか!と一瞬パニックに陥ったが、ここで引くわけにはいかない。
俺は自分に落ち着け、お前は痛みをコントロールできるニュータイプの無痛人だ、優しくて賢い、力持ち、しかもなかなかのイケメンだ、とありったけの自己暗示をあびせる。
そしてワックスが冷めて賢者の石のように固くなるのを虎視眈々と待つ。
さあ、時が来たようだ。
ここで引き抜かなければいつ引くというのだ。
物事には引き際というものがある。
白いプラ棒を両鼻からぶら下げたままで豊かな社会生活を送ることがお前にできるのか?
さあ、一気に引き抜くのだ俺。
俺は二本のプラ棒に手をかける。
これを引き抜けば…
鼻毛を1本抜いただけでも涙がちょちょ切れる。
何十本もいっぺんに引き抜いたとしたら何が起こるというのだ。
眠っていた獣が眼を覚ますだろう。
抜かずの刃が輝きを放つだろう。
全身のチャクラが回転をはじめるだろう。
パンドラの箱の口が開くだろう。
黄泉の入り口からノアの箱船が出航するだろう。
ビッグバンを起こした宇宙の真理がライオンズマンションの獅子の口から溢れ出すだろう。
これを引き抜けば。
俺は。
お前は痛みをコントロールできるニュータイプの無痛人だ、優しくて賢い、力持ち、しかもなかなかのイケメンだ。
眩いばかりの白い光に包まれた俺は、一息に二本のエクスカリバーを引き抜く。
遠くで誰かの悲鳴が聞こえた気がした。
ところで、手を洗うために泡ハンドソープの入れ物(ポンプ式)の前に左手を差し出す、右手でポンプの頭を押す。
すると差し出した左手が近すぎて、ポンプの首の部分で左手を挟んでイテっとなる。
加害者も被害者も俺という一人カルマ。
これが地味に痛い。
そして悔しい。
さあ、仕事、やっちゃうぞ!
それゆけ俺。
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