しゃがみ頬づえサラリーマン

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こんにちはウルカ。

 

俺の通う会社の近所に、非常に小さなカウンター席だけのカレー屋がある。

席と席の間は相当狭く、気を抜くと隣に座る者に触れてしまう。

座席は固定式で、自分の好きなポジションで座る事もままならない。

更に、そのカレー屋がお待たせいたしましたと出すカレー皿は異常にデカい。

狭いカウンターに対して暴力的にデカい皿。

隣に座る者のカレー皿と干渉してしまうので、自分に対して真っ直ぐにカレー皿を置けず、おかしな体勢で食べることになる。

それでも、俺はこのカレー屋の常連である。

旨いからね。

カツカレーをおかしな体勢で食べていると、今朝も見かけたしゃがみ頬ずえサラリーマンの事を思い出す。

 

ここ毎朝、決まった場所、時間に、不自然にしゃがんだ状態、相撲でいうところの取組直前で力士同士が見合っているような格好で、両手で頬づえをつき、目を閉じてじっとしている男がいる。

身なりは小綺麗であり、普通のサラリーマンのようだ。

出勤前の瞑想か、精神統一の類だろうか。

それとも、何かとてつもないものから世界を守っているのだろうか。

しゃがみこんで頬づえをつき、目を閉じている場所は駅の改札口を出てすぐの広間中央付近であり、朝の通勤時間の人々の流れを両断している。

流れる人々は毎朝の事なのでとくに気にとめる様子もない。

人に限らず生き物は、可能な限り自分が心地のよい状況を目指して生きる。

陽に当たりたければ日向にでるし、雨に濡れたくなければ軒下にはいる。

嫌な事を我慢してやるのは、我慢した先に至福が手にはいる、または、我慢しなかった場合に陥る状況の方がもっと嫌な事なのだろう。

 

俺は旨いカレーを不快な環境で食べ終えると、何となく駅へ向かった。

改札口前の広間には、13時を過ぎた今も、変わらぬ場所、格好で、しゃがみ頬づえサラリーマンはいた。

目を閉じてじっとしている彼は、なんだか心地よさそうにみえる。

俺は、打ち合わせに遅れそうだったが、それよりも自分はあのしゃがみ頬づえサラリーマンをみたかったのだな。同じように、あの男はなによりもあそこでしゃがんで頬づえをつきたかったのだなと思った。

 

 

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