撒く者と撒かれる者

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おはようウルカ。

 

散歩をするには絶好の陽気だね。

 

チクワを投げ入れないで下さい。

うちの猫にチクワをやらないで下さい。

これは飼い猫です。

チクワを勝手に与えないで下さい。

猫が体調を崩します。

チクワまくな!

みんな迷惑しとる!

飼い猫や!

見つけ次第警察に通報します。

地面が汚れるのでチクワをまくな。

迷惑です。

チクワやめろや。

臭いからチクワ禁止。

 

建物に所狭しと貼られた紙には、言葉は多少違えど同じような内容が書き擲られている。

随分と経年を感じるものと、貼られたばかりであろう真新しいものが、この攻防の長い歴史を感じさせる。

その真下に、無造作にチクワがばら撒かれている。

 

猫の気配はない。

 

 

狂気。

他にどんな言葉があろうか。

 

撒く者、撒かれる者。

建物にびっしりと貼られたチクワの文字。

正常な精神の持ち主とは思えない。

何故、執拗にチクワなのか。

輪の形からくるカルマ的なメッセージか。

もしかしたら、端から猫など存在しないのではないか。

 

燦燦と降り注ぐ太陽の下で、この小さな異様はあっけらかんと転がっていて、狼狽する俺を嘲笑うかのようだ。

 

 

そして、チクワをチワワと読み違えていた俺もまた、この狂気の世界の住人なのかもしれない。

 

ウルカ、今日は何処へいこうか。

 

今日のウルカはデュビアを4匹、ササミを7切れ、砂肝を5切れ