幸せそうな村

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おはようウルカ。

 

未舗装の荒れたサバンナをトヨタの四輪駆動車が畝るように進む。

運転するラドさんは46歳。

日焼けした肌と健康的な歯、そして優しさの塊のような鋭い眼光は地平線にむけられている。

生命力がだくだくとあふれでて、自らを心地よい温水て包み込んでいるような人で、隣に座っているだけでこちらまで生命力の湯に首まで浸かっているようだ。

アフリカ大陸。

ラドさんは赤十字社の仕事に関わって今年で15年になる。

荷台は診療できるスペースに改造されており、簡単な外科手術にも対応する。

これから50キロ程先の村にマラリアの予防接種と妊婦の検診へ行くそうだ。

ラダーフレームに板バネの乗り心地は良いとは言えないが、不思議な安心感がある。

ラドさんは路面の荒れ状況を的確に判断しながら確実に村へと近づく。

舗装された道であれば1時間ほどで到着する距離だが、雨や風や太陽が好き放題削った道を行くとなると3倍近い時間が必要となる。

ラドさん、どうしてこんなに住みにくそうな場所に人が住んでいるんだろう?

先祖たちは何故ここを選んだんだろう?

もう少し北へいけば気候もマシになるし、水や森だってあるのに。

ヒラヤマ、人は自然環境には驚くほど順化する事ができるよ。

でもね、人間社会ってやつは大きくなればなるほど複雑で、コントロールすることも馴化することも困難になる。

人間らしい生活を送ることが難しくなるんだ。

彼らはこの場所でミニマルな社会を維持している。

とても幸せそうだよ。

ラドさんは笑った。

幸せそうだった。

カラカラに青い空は異常に彩度が高かった。

オレ達は荒れたサバンナを進む。

人が幸せそうに暮らす村へ向かっている。

 

あれから随分と色々な時間が経ったな。

2019年もあと6ヶ月あまりでおわる。

夜通し降っていた雨がやんだ。

オレはクラッチを踏むとキーを右に回す。

あの時と同じトヨタの四輪駆動車が低い唸り声をあげて目覚める。

ラドさん、元気でやってるかい。

オレはこっちでなんとかやってる。

ちょっと仕事をやっつけてくるぜ。

 

 

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今週のお題「2019年上半期」