真太郎

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こんばんはウルカ。

 

選択機というものがある。

コートの色に迷ったとき

昼食のメニューに迷ったとき

贈る言葉、かける言葉に迷ったとき

進学先、就職先に迷ったとき

T字路や樹海の獣道に迷ったとき

 

など、人生の岐路に立たされた者の心強い味方として昔から人々に親しまれてきた。

近年では医療メーカーの参入により、人体に埋め込むタイプの選択機が人気を博している。

 

先月、業界最大手のサニーが満を持して発売した選択機は、高級ブランドのメルメスとのコラボということでも話題となっている。

このラグジュアリーな選択機をなんとしても手に入れようと、富裕層のみならず、国内外の転売屋、キャバ嬢、学生、サラリーマン、サラリーウーマン、マイルドヤンキー、タクシードライバー、占い師、コメディアン、ビキニ姿て洗車する仕事の人、などが、ショッピング・ローンを組んでまでも我先にと購入している。

核心をついたメルメスのデザインと、これまで培ってきたサニーの高い技術力が見事に融合されており、今年のベスト・バイ・選択機といって良いだろう。

 

オフィス街。

昼時のパスタ屋は行列ができている。

ペスカトーレのランチセットが人気だ。

行列に並ぶサラリーウーマンのふたり。

「ねえ、ユウコ、欲しいブランドバッグがあるんだけどさあ、買っちゃおうかなぁ」

「ええ?ちょっメグミ、お金使い過ぎじゃない?先月も高い買物したって言ってたじゃん」

「うん、でも、真太郎も大丈夫っていってくれてるし」

「ええっ?ちょっと、真太郎ってだれよ?しばらく会わないうちに彼氏できたの?きいてなーい!!会社の人?!いいなーうちの会社ろくな男がいないのよ、メグミの会社カッコいい人多そうだもんなー」

「あはは、ユウコ、違うの、真太郎は初恋の人の名前で、今はわたしの選択機の呼び名なの」

「ヘイ真太郎、ブランドバッグ、メルメスとルイ・ギトン、どっちがいいかな?」

そう言うと、メグミは白目を剥いて小刻みに震えはじめる。

しばらくしてメグミの額が割れて、ぽっかりと5センチ四方ほどの穴があく。

その穴から、メルメスのブランド服を着た鳩が勢いよく飛び出す。

「クルックゥ、ゼッタイ、メルメス!ゼッタイ、メルメス!、ゼッタイ、カッタホウガ、シアワセニナルヨ!ベストチョイスハ、メルメス!」

真太郎は甲高い声でそう叫ぶと、メグミの額の穴に引っ込んだ。

「わー!!かわいい!!!いいなー!」

 

 

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