小柄なシロクマ

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こんばんはウルカ。

 

電車に乗っている。

まあ、空いているかな。

皆、忘年会に忙しいのだろう。

オリーブとグレーの中間の色の髪をした異常に痩せた男がスマートフォンに向かって顔を顰めている。

スマートフォンはその顰めっ面に応えるようにブルーとホワイトの中間の色をした光をじんわりと放つ。

その顰めっ面の男のとなりで、小柄な女がトートバッグを弄っている。

何を探しているのか、なかなか見つからないようだ。

どうした、鍵でもなくしたか?

トートバッグの中でせわしなく動いていた小柄な女の手がとまる。

小柄な女がゆっくりとトートバッグから取り出したのは、小さなシロクマのイヤリングだった。

小柄な女は安心したようにイヤリングを摘み上げると、ゆらゆらと揺れているシロクマに何やら話しかけている。

きっとお気に入りのイヤリングなのだろう。

微笑ましいね。

小柄な女が話し終えるとゆらゆらと揺れていたシロクマが大きく口をあける。

それから、小柄な女の人差し指に勢いよく噛みついた。

イヤリングのシロクマは小柄な女を人差し指からパクパクと食べ続け、あっという間に食べ終えた。

となりのスマートフォンを顰めっ面で睨む男はチラリとシロクマに喰われ続ける小柄な女に目をやったが、すぐにまたスマートフォンに視線をもどした。

シロクマは小柄な女と同じくらいの背丈の小柄なシロクマになった。

小柄なシロクマは小柄な女の残したトートバッグを拾い上げると肩にかけた。

新宿駅につくと、顰めっ面の男と小柄なシロクマは腕をくんで降りていった。

俺は、なんだか羨ましくなって、スマートフォンを取り出すと、顰めっ面でシロクマのイヤリングを検索する。

スマートフォンはその顰めっ面に応えるようにブルーとホワイトの中間の色をした光をじんわりと放つ。

ふと気がつくと、俺の隣で小柄な女がトートバッグを弄っている。

俺は、チラリと小柄な女に目をやったが、すぐにまた視線をスマートフォンにもどした。

 

 

 

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