鳩のそれだとしたら

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おはようウルカ。

 

早朝、まだ目覚める前の住宅街を散歩する。

空気はひんやりと静かで心地が良い。

今日は曇りかな。

雨かもしれないな。

そういえば、雨をテーマに何か書こうと思っていたんだ。

近所の小さな公園を目指して歩く。

アパートの駐輪場に乱雑に置かれた自転車。

カラスが残飯を狙っている。

月極駐車場に隙間なく置かれているクルマ達は、目を開けて眠っているようで、少し怖い。

野良猫がのんびりと道を横切る。

鳥が雲に埋まるように飛んでいる。

街路樹が退屈そうにまた同じ場所に立っている。

 

公園では鳩が何かを啄ばんでいる。

鳩の首の動きは、コミカルとグロテスクの中間だね。

録画して5倍速くらいでループ再生したら没入感が凄そうだ。

帰り道、上半身裸で自転車に乗るアジア人を見た。

裸で自転車で、首の動きが鳩のそれだとしたら、それは一つ、何かの完成形なのかもしれない。

 

ゆっくりと今日が始まった。

雨はまだ降らない。

 

今日のニュース

「半ズボンはいたら逮捕」イラクでお触れ

食パン買ったら 全部"パンの皮"だった イギリス

ウルカはデュビアを9匹

オランウータンかイルカ、または人間を飼う

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おはようウルカ。

 

爬虫類って良いよな。

 

爬虫類というと、カメやヘビ、トカゲなどがメジャーだね。

カブトムシやクワガタムシと同じく、子供の頃はあんなに夢中だったのに、大人になると興味がなくなる。

少し気味が悪いと感じる人も多いだろう。

 

人間はペットに自分よりも知能が劣っている事を求めるそうだ。

自分より劣っている=可愛い

自分より優れている=可愛くない

らしい。

 

子供にとって犬や猫は賢すぎる。

カメやカブトムシが丁度良いのかもしれない。

子供のくせにカメより犬に夢中な奴は、きっと秀才なのだろう。

大人になったらオランウータンかイルカ、又は人間でも飼うのだろうか。

 

大人のくせに犬より虫や爬虫類に夢中な奴は、ペットというよりも、コレクションとして扱っている。

フィギュア等の収集家に近いイメージだね。

勿論どの世界にも変わり者はいるもので、昆虫やゼニガメに並々ならぬ愛情を持ち、毎日のように対話し、意思疎通を実現しているという大人も存在する。

ちなみに俺の母親は木とよく会話をするそうだ。

 

ああ、そうだった、良いところを言わなければ。

爬虫類でも大型種は鳩から猫程度の知能を持っていると言われている。

長寿命なものが多い。

体臭がない。

鳴かない。

ベタベタと愛情を求めてこない。

動きがのんびりとしているため、みていて疲れない。

目が合うと首をかしげる、手を出すと登ってくるなど、意外に可愛らしい仕草をする。

生態や姿形に古代の生物の名残があり、ロマンを感じる。

俺の話を聞いてくれる。

あれ?おい、聞いてる?

 

 

今日のニュース

ケイン・コスギ 若き日の極貧生活を激変させたヒラメキ「最近、鍛えてるから…」

相手の頭を地面にたたき付ける 傷害でプロレスラーを逮捕

YOSHIKI出演のNHK「SONGS OF TOKYO」、世界中から涙と感動の声殺到

ウルカはデュビアを5匹

毒にも薬にも

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おはようウルカ。

 

こんなスパムメールが来たらどうだろう。

 

毎度ご無沙汰しております。

人は白目にするとき、たいてい瞳を上にむけますが、瞳を下にむけて白目にする方を探しています。

だからといって、電車にぶら下がっている吊革は、本当にあれがベストな最終形なのでしょうか。

私共はそうは思いません。

結局、独自のダンサナブルなフォームを砲丸投げ競技に持ちこむ者は失格となります。

よしんば、女装をしていたとしても。

それは本当に、銀色に輝くペーパーナイフのようでしたら、是非私共に御用命くださいませ。

重ね重ね宜しくお願いにあがります。

 

 

 

このメールが本当だとしたら、誰かを幸せにする事になるのだろうか。

このメールが嘘だとしたら、誰かを傷つける事になるのだろうか。

 

ならんだろうな。

 

 

 

今日のニュース

北欧の女性、助けた犬に咬まれ死亡

女子中生のスカートにスマホ盗撮気づいた父が男をとりおさえる

寺島進が埼玉で初の一日警察署長

ウルカはデュビアを2匹

うおぉぉ味噌ラーメン

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こんにちはウルカ。

 

快晴だな。

こんな日はオートバイに乗って、適当な公園を見つけて、ベンチにごろんと転がって、本でもだらだらと読んで、そのまま少し昼寝して、またオートバイに乗って、帰りにラーメンでも食べるに限るよな。

 

だけど俺はこれから仕事があって、せめて風でも感じようとクルマの窓を全開にして、すれ違うオートバイを横目に見ながら、職場へと向かっているよ。

ああ、風で髪がボサボサだ。

凄いスピードで仕事を終わらせてやろう!

でもクオリティはさげないぞ!

うおぉぉぉぉ!

昼メシは味噌ラーメンにしよう。

 

 

今日のニュース

ウッドストック50周年フェス中止を巡り、主催者と電通がドロ沼化

ウルカはササミと砂肝を25切れ

上弦の月

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おはようウルカ。

 

見るよ。

 

橋の上で立ち往生している列車を見た。

向かいのオフィスビルの16階で、バタフライ泳ぎの動きを真顔で繰り返す人を見た。

自転車に乗りながら大声で吉川晃司のモニカを歌っている人を見た。

すれ違うとき少し小声になった。

噴水の周辺でバク転を続けざまにしている人を見た。

アイドルの路上ライブでメンバーの父親らしき人が独特のダンスで応援しているのを見た。

工事現場で若造に叱られて歯を食いしばっている初老の男を見た。

目が痛くなるような夕日を見た。

電車で化粧していて、揺れに耐えられずアイラインがなかなかひけない人を見た。

自分の後頭部を叩いて何かに悔しがる人を見た。

執拗に水道管を撮影している人を見た。

気に入っている腕時計を見た。

時間を見るのは忘れた。

首輪をつけた迷子のシェパードを見た。

ガードレールの傍に花束を置いて、一生懸命に手を合わせる若い女を見た。

新幹線の通路で寝そべる人をみた。

スマホの画面を食い入るように、凄く嬉しそうに、ニヤニヤしているおばあちゃんを見た。

自動車にはね飛ばされる瞬間のスクーターを見た。

今にも雨が落ちてきそうな空を見た。

ドブ川に三輪自転車が半分埋まった状態で死んでいるのを見た。

自動車を運転しながら泣いている人を見た。

塀に登るのを何度も失敗している猫を見た。

何かに踏み潰されてぺしゃんこのムカデを見た。

凄いスピードで走っているオートバイを、凄いスピードで追いかけているトラックを見た。

約1時間後、2度目にトイレに行った時にも、1時間前と同じ場所、同じ姿勢で髪をセットする同僚を見た。

古着屋で、これユーズドっぽくない?と連れに相談している人を見た。

窓の外の真っ暗を見た。

泣きぐずれる悲鳴を見た。

わずかに減っている靴の踵を見た。

空を飛んでいる飛行機を海岸から見た。

上弦の月を見た。

若い時より少しだけ歳をとった自分を見た。

 

 

 

今日のニュース

楽しんごが10才のユーチューバーを批判

富士フイルム写ルンですなど価格を大幅改定 値上げ30%以上
ウルカはデュビアを7匹

黄砂飯店

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おはようウルカ。

 

近所の中華料理屋の新メニューを考えようぜ。

 

 

・サラダ

グリーン人民サラダ 430円

カルパッチョ伊藤 750円

湯けむり茎わかめ 580円

ケインコ スギ 280円

春雨みどりちゃん 630円

 

 

・一品料理

えびちん 550円

暴れフンドシ一本背負い 680円

ピリ辛暴れフンドシ一本背負い 780円

ポークビッツ北京 330円

黒酢麻婆ぁ 660円

わさびかぶれ 400円

クミン香る若頭パン粉まぶし 1200円

ぼけナスと大根のくそみそ炒め(パン付) 880円

ピーたんのニンニク萌え 550円

のどぐろ 1200円

夕暮れサモハン 800円

黄熱大力餅 660円

 

・飯類

ぽっちゃり君 550円

キクチ炒飯 600円

あんかけ銀河 700円

台湾ホンコン 400円

オッケー万力 680円

ユンピョウ巻き 500円

ライスレモン 180円

 

 

・麺類

メン、メーン! 650円

味噌メン、メーン! 750円

暴力温泉メン 750円

ニーハオ次郎 750円

激辛ヌンチャクそばにおいでよ 800円

焼豚カッパはげ 880円

けつあご冷麺 700円

エアロビ笑顔 850円

 

・デザート

源さん 300円

フリューチェ 280円

ワキ見せグリコ人 400円

つくし 800円

どすこい中華メロディ 680円

堪忍豆腐 480円

落ち武者メロン 550円

 

 

・お飲み物

ビール 500円

日本酒 400円

チェッコリ 700円

 

林家グリーンティー  200円

大変ご無沙汰しております 200円

清涼美人 250円

ウローンぽ 200円

ペプシ 200円

チャックウィル ソン 200円

恋人プイプィ! 250円

コピー茶 150円

 

 

 

なあウルカ、お前がもう少し大きくなったら一緒に中華料理屋へ行こう。

ポークビッツ北京を注文して一緒に食べよう。

料理人はお前を食材と思い、狙ってくるかもしれないな。

そうしたら、一緒にトカゲ走りで逃げようぜ。

 

 

今日のニュース

太川陽介蛭子能収の“バス旅”2年半ぶり復活

ウルカはデュビアを7匹

負けるわ

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おはようウルカ。

 

小刻みに、リズムをとっている。

身体を前後に揺らす。

真上のライトがつくった短い影が、足元に纏わりついている。

背筋から汗が吹き出し、舌がしびれる。

緊張はしているが、動きが硬くなる程ではない。

右手を前にした構え、サウスポー。

もう半歩前に出れば、自分の間合いに入る。

 

意識を集中する。

野次や歓声が遠くに霞んで、目の前の相手にピントが合う。

こいつについて、全く情報がない。

拳を握らない構えから、柔術系のスタイルなのかもしれない。

グラウンドは得意ではないが、十分に対応できるトレーニングは積んでいる。

 

落ち着け、完全に間合いに入る前にもう一度相手をよく観察しろ。

 

摺り足で圧力をかけてきている。

おそらく右利きで、グラウンドを狙っている。

相手のタックルにカウンターで膝をあわせるか。

いや、そう見せかけて打撃でくる可能性もある。

あの柔術系の構えはフェイクかもしれない。

いやに落ち着いてやがる。

よほど自信があるのか。

殺気が全く無いのも不気味だ。

 

相手の肩に視線を移す。

肩の動きを見れば、拳の動きを読むことが出来る。

ふわりと、相手の体が沈んだ。

やはりタックルにきやがった。

シュ!鋭く息を吐く。

左膝をカウンターで相手のこめかみに合わせる。

完璧なラインだ。

これは、極まる。

なに!?

渾身の膝蹴りが空を切った。

既の所で相手が更に身体を沈めたのだ。

完全にしゃがむ様な格好となっている。

モゾモゾと腕を動かしているが、死角であるため手元が見えない。

古武術に、暗器という小型の刃物がある。

暗殺などに用いられる武器で、掌に潜ませて使う。

女が、悲鳴をあげる。

 

身体を起こした男の腕に抱えられていたもの。

よーち、よち、可愛いおててでちゅねえ。

抱えた真っ白な仔猫の肉球を触っている。

女がまた悲鳴をあげる。

ひえー!可愛いねぇ!

 

 

ほらー!

ご飯が冷めますよー!

権三さん、トメさん、もう暗いからお部屋に入って。

ヘルパーの吉田さんは少しだけ太っていて、とても明るい人だ。

ワハハと豪快によく笑う。

権三は、相変わらず小刻みにリズムをとりながら、そよ風ホームの玄関に向かう。

同い年のトメさんが手を繋いでくれた。

 

あら、見かけないおじいちゃんね。

可愛い猫ちゃん!

お目々がブルーなのねぇ。

ご家族の方が心配されますよ。

おじいちゃん、どこから来たの?

 

老人は、答えるかわりに少年のような笑顔で仔猫の肉球をみせた。

 

ワハハ!

その笑顔には負けるわ。

おじいちゃん、晩ご飯、うちで食べていく?

 

 

今日のニュース

遠藤ミチロウ氏68歳、膵臓癌のため死去

ウルカはデュビアを5匹、ササミを6切れ、砂肝を6切れ

眼球を三脚にのせる

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おはようウルカ。

 

絶好のシャッターチャンスに出会う。

バッグからカメラを取り出す。

レンズキャップを外す。

電源を入れる。

カメラを構える。

焦点距離を決める。

オートフォーカスがピントを合わせる。

シャッターチャンスを逃す。

遅い。

カメラをかまえていない時に限ってシャッターチャンスは訪れる。

 

 

カメラという道具は、眼球と一体化するのに後どの位の時間が必要なのだろう。

 

シャッターチャンスに出会う。

そのまま眼球で撮影する。

シャッターチャンスをものにする。

いいね!

 

カメラやレンズメーカーが挙って眼球の水晶体を開発販売する。

手術費全額キャッシュバックキャンペーンとかやったり。

ズームレンズならぬズーム水晶体を選ばす、敢えて単焦点の眼球で勝負する写真家が名を馳せたり。

 

 

100年も経てば、今生きている人間の殆どが死んでなくなる。

俺なんてあと精々4、50年くらいのもんだろう。

 

眼球カメラには間に合いそうにないな。

手術怖えからまあいっか。

死んで粉々になった俺の原子は、誰かの水晶体の一部になるかもしれないね。

それなら単焦点が良いなぁ。

なんだか男らしくて格好いい。

 

 

音楽はどうだろう。

人間の声帯に様々な楽器音が出せるシンセサイザーを仕込む。

脳内でシーケンスする。

ブルートゥースで外部スピーカーにアウトプットする。

うーん、これは何か違う気がするな。

ステージで手ぶらで棒立ちのミュージシャンを想像すると笑える。

 

それはそうと、長時間露光や定点撮影でじっとしてなきゃいけないのは辛そうだ。

そんな時は眼球を外して三脚にのせて…

 

 

今日のウルカはデュビアを9匹

よう、あったけぇな

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こんにちはウルカ。

 

うつ伏せで目を閉じている。

自動車のエンジンとタイヤが地面をなぞる音をきいている。

すぐそこで停車した。

ギイィ、ガチャ、バタン。

サイドブレーキを引き、ドアを開けて閉めるまで4秒弱。

ザッ、ザッ、

足音がこちらに向かっている。

堪らなく好きな音だ。

少しだけ頭をあげる。

あの人の優しい匂いをさがす。

 

目も、鼻も、耳も、その能力を失いかけている。

身体のいつくかの場所に腫瘍があり、気管に炎症を起こしている。

呼吸が難しい。

 

ドアが勢いよく開く。

ぼんやりと、あの人の明るい顔が見える。

ぼんやりと、名前を呼んでいる声が聞こえる。

ぼんやりと、大好きなあの人の匂いを感じる。

 

力を振り絞って、身体を起こす。

力強い手で優しく背中を撫でてくれる。

目を閉じる。

 

もう13年か。

そんなになるか。

あっという間。

いやそうでもないか。

一緒にいてくれてありがとう。

信頼してくれありがとう。

撫でてくれてありがとう。

また一緒に散歩しよう。

別れの日がきても悲しまないで。

幸せがたくさんあったから、よかったじゃん。

 

 

クルマを駐車する。

勢いよくサイドブレーキをひく。

あいつの好きなチーズを買ってきたぞ。

小屋のドアを勢いよくあける。

真っ黒なあいつがヨタヨタと起きあがる。

よう、調子はどうだい。

 

もう13年か。

そんなになるか。

あっという間。

いやそうでもないか。

何をフラフラしてやがる。

まだまだ、これからだぜ。

少しだけ乱暴に、あいつの背中を撫でた。

あったけぇな。

ありがとうな。

 

 

今日のウルカはデュビアを7匹

撒く者と撒かれる者

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おはようウルカ。

 

散歩をするには絶好の陽気だね。

 

チクワを投げ入れないで下さい。

うちの猫にチクワをやらないで下さい。

これは飼い猫です。

チクワを勝手に与えないで下さい。

猫が体調を崩します。

チクワまくな!

みんな迷惑しとる!

飼い猫や!

見つけ次第警察に通報します。

地面が汚れるのでチクワをまくな。

迷惑です。

チクワやめろや。

臭いからチクワ禁止。

 

建物に所狭しと貼られた紙には、言葉は多少違えど同じような内容が書き擲られている。

随分と経年を感じるものと、貼られたばかりであろう真新しいものが、この攻防の長い歴史を感じさせる。

その真下に、無造作にチクワがばら撒かれている。

 

猫の気配はない。

 

 

狂気。

他にどんな言葉があろうか。

 

撒く者、撒かれる者。

建物にびっしりと貼られたチクワの文字。

正常な精神の持ち主とは思えない。

何故、執拗にチクワなのか。

輪の形からくるカルマ的なメッセージか。

もしかしたら、端から猫など存在しないのではないか。

 

燦燦と降り注ぐ太陽の下で、この小さな異様はあっけらかんと転がっていて、狼狽する俺を嘲笑うかのようだ。

 

 

そして、チクワをチワワと読み違えていた俺もまた、この狂気の世界の住人なのかもしれない。

 

ウルカ、今日は何処へいこうか。

 

今日のウルカはデュビアを4匹、ササミを7切れ、砂肝を5切れ

リンダリンダ

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おはようウルカ。

 

学生の頃、うどん屋の二階の部屋を借りて、仲間3人で暮らしていた事があった。

学校から近いということもあり、暇学生達のたまり場と化していた。

常に5人以上は部屋に転がっている状態で、皆で焼肉やら鍋、酒をのんだりと賑やかなものだった。

台所と居間はすりガラスの引戸で仕切られていて、夜、居間で雑魚寝していると、一階のうどん屋を寝ぐらにしているドブネズミ達が、残飯を狙って台所へ侵入してくる。

すりガラスごしにみえる無数のシルエットは、日に日に増えていくようだった。

 

トイレへ行くには、すりガラス引戸を開けて、台所を通らなければならない。

夜中にトイレへ行こうとするならば、ネズミくん達を驚かさないようにそうっと引戸をあけて…

などと悠長な事を言っている場合ではない。

引戸の向こう側は、戦場、いや地獄と化している。

 

イメージとしてのネズミくんは、お目々がクリクリで、モフモフで、両手で上手にチーズをたべるよ!

というのが一般的だろうが、現実は大きく違っている。

 

すりガラスの引戸をあける。

無数のドブネズミどもが一斉にこちらを見る。

小ぶりな猫ほどの大きさのある奴らは、人間にびびって逃げ隠れするなんて事はない。

油にでも浸かったかのように、ベタベタと不潔でどす黒い。

疾患なのか、怪我なのか、所々体毛が抜け落ち、顔面の皮膚は赤紫に爛れている。

牙と目玉をむきだして威嚇するさまは、憎悪、残忍 、狡猾、邪悪、凶暴、残虐。

ゴフー、ゴフーとあげる威嚇音は空気を切り裂いて、俺の魂を喰いちぎろうとする。

デスメタルバンドのアルバムタイトルの粋を集めたような地獄の形相はトラウマとなり、可愛らしいウサギやリスなどを含む全ての齧歯類を見るたびに、フラッシュバックとなって俺を襲う。

 

あれに写真には写らない美しさがあるとは思えんぞ!

 

それでは歌って頂きましょう、リンダリンダ

 

今日のウルカはデュビアを7匹

いきなり挿まれたらウザい

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おはようウルカ。

 

茶色い河が流れている。

3階の角部屋の窓から出来損ないのガンジャを捨てる。

手を洗う石鹸で適当に洗ったシャツがまだ乾いていない。

白人観光客から盗んだソニーをマーケットへ売りにいく。

 

高層階から街を見下ろしている。

橋と自動車と、アスファルトと人と街路樹とビルが、飽きられたオモチャのように投げ出されている。

5分後に会議がある。

飲み干した酎ハイの空き缶をトイレのゴミ箱に捨てる。

 

荒れた海の上で眠る。

食料はチョコレートが二箱と腐りかけのフライドチキン。

伸び始めた髭に触れる。

目覚めたら、パスポートにボールペンで恋人宛の手紙を書く。

 

ステージ脇で深く息をする。

派手すぎる靴が滑稽で笑う。

スポットライトに向かって走る。

雪崩のような歓声にのまれそうになる。

逆光に目を細めながら、マイクに手を伸ばす。

 

銃を握っている。

戦って死ぬことが最大の意義だと教わる。

壊れかけのトヨタに乗って戦場に向かう。

隣で同い年の少年が震えている。

別れ際、妹にもらった不恰好な人形をポケットにしまう。

 

暗闇から、突然真っ白な世界に放り出される。

声を出して初めての呼吸をする。

身体を柔らかい布で包まれる。

笑いながら泣いている温かくて優しい人に抱かれる。

幸福を吸い込むために、めいっぱいの大声で呼吸をする。

 

 

なあウルカ、こういうのって映像でやった方が分かりやすいんだろうな。

保険会社とかのCFで使えそう。

いや、使えねえか。

でもさ、文字を読んで好き勝手に想像する方が、何かしらの能力が高まりそうだよ。

足のツボが内臓とリンクしているように、想像は第六感とリンクしているかもしれないぜ。

おぉ、なんだかオカルトじみてきた。

 

そういえば、文字だけのコマーシャルって見かけないよな。

小説とか読んでいて、いきなり旅行会社なんかのコマーシャル文章を挿まれたら新鮮だよね。

いや、ウザいか。

 

 

今日のウルカはデュビアを4匹

透明なくせに

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おはようウルカ。

 

家畜の朝に、メロンソーダとチリドッグをガイコツマークの黒い車でドライブスルーしたら炎に包まれて、愛はいらないって人間の100年後に思いをはせたら、悪い人たちがやってきて、魔王をぶっとばしたよ。

ロックだね。

 

雨がやんだで、単車で出かけようかや。

あ、バッテリー充電しないかんがや。

そういやぁタイヤの空気も入れないかん。

ガソリンも入っとらんがや。

まあええて、とりあえずいこまい。

部屋でじめじめアルヴァノト聴いとる場合じゃないんだて。

 

あれ、ブランキーというよりも、あの市長みたいになってしまった。

名古屋弁って難しいね。

市長がヘッドライトのわくのとれかたがいかしてる車でD.I.Jのピストルだったら、面倒くさそうだな。

 

それはさておき、海沿いをバタバタと走ると、海のランダムに反射する金色が綺麗で興奮する。

小舟が漁をしている。

海苔か貝の養殖場がのどかにゆれている。

潮が臭え。

ギアを一つ上げる。

エンジンがドクドクと脈打つ。

やたらとアイデアが湧いてくるが、次から次へと忘れる。

岩場から灯台が生えている。

水平線が斜めになる。

カーブからの立ち上がりで一気にアクセルを開ける。

振動でアドレナリンと涎が吹き出す。

キャブの調子が良い。

言葉になっていない声をあげる。

 

海はウダウダと浸かるより、潮風に吹き飛ばされそうになりながら眺めるのが最高だな。

 

彼処にみえる丘まで行ってみようか。

海も空も、透明なくせにやけにあおいじゃねぇか。

 

いかん、ガソリンいれるの忘れとった。

 

 

今日のウルカはデュビアを6匹、ササミを8切れ、砂肝を9切れ

聖なる手

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おはようウルカ。

 

じわりじわりと夜が明ける。

窓の前に立つ。

先程から何者かの視線を感じているが、窓の外はまだ薄暗いため、視線の主の姿を確認する事は出来ない。

この部屋は壁一面が窓になっている構造で、カーテンやブラインドなどの目隠しは一切ない。

 

窓に手をあてる。

分厚いガラスから、夜と朝の狭間の冷たい外気がぼんやりと伝わってくる。

 

ゆっくりと、腰をくねらせる。

徐々に動きを大きくする。

ガラスに身体を押しつける。

全身を使って情熱をダンスにこめる。

吐息でガラスに白くモザイクがかかる。

畝るようなリズムにあわせて性器を露出させる。

刹那、視線の主と目が合ったような気がした。

 

 

ウルカ、お前は雄かもしれないな。

オオトカゲの雄にはヘミペニスという二股にわかれた形の生殖器がある。

普段は体内に隠れているが、稀に下腹部から露出させることがある。

今朝、それを見たような気がしたよ。

タコ踊りが激しすぎて定かではなかったけど。

 

お前のヘミペニスは、ヒンドゥー教の神器として高値で取引される、聖なる手という神さまグッズに形がそっくりらしいな。

本物は希少植物から作られるが、なかなか手に入らない。

その為、密猟したコガネオオトカゲからペニスを引っこ抜いて乾燥させた偽物が大量に出回っているそうだよ。

 

どうだウルカ、ゾッとした?

おいおい、俺はお前のペニスを引っこ抜いたりしないから安心しろよ。

ヘミペニス、もう一回みせてくれる?

 

 

今日のウルカはデュビアを4匹、ササミと砂肝をがっつり。

ぎゅうぎゅう詰めの霊安室で即売会

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おはようウルカ。

 

革製品や木製品が怖ろしい。

 

数年前から、周期的にこの感覚に陥るようになった。

俺は素材として革や木がとても好きな時期があった。

現在でもやっぱり好きではあるが、革でも木でも元は生きていて、俺が愛用しているのは死骸ということになる。

生きていた頃は其々が唯一無二として存在していて、様々な環境で特別な一生を過ごした事だろう。

その死骸を人間がバラバラ、ごちゃまぜにして、家や道具、衣類に使っている。

 

大量のバラバラでごちゃまぜなミイラと生活を共にしていると思うと、なんだか怖ろしくなる。

綿や畳まで怖い。

スーパーマーケットに至っては、死骸をぎゅうぎゅうに詰め込んだ霊安室で即売会やってます。

狂気です。

みたいな。

これは何症候群なんだろうな。

 

そもそも何故死骸を怖いと感じるのだろう。

考えても、調べても、いまいちピンとこないなぁ。

 

そういえば、虫は死骸より生きている方が怖い気がする。

 

ウルカ、どう思う?

 

今日のウルカはデュビアを14匹